イージー・リスニング/セカンド・グレイド
ピーター・ギルが率いるフィラデルフィアの5人組パワー・ポップ・バンド、セカンド・グレイドの新作です。2020年のデビュー作『ヒット・トゥ・ヒット』と2021年のデモ集『ウィッシュ・ユー・ワー・ヒア・ツアー・リヴィジテッド』に続く1作。前2作のどっちも、近年のパワー・ポップものの傾向通り、大半が1分台の短い曲ばかりを20曲以上ぶわーっと詰め込んだ、なんというか、こう、カラフルなパッチワークのような、めまぐるしい仕上がりだったのに対し、今回は1分台が全16曲中7曲。1分半以下は3曲。少しは落ち着いた(笑)仕上がりかも。
もちろん持ち前のキュートでロマンティックな胸キュン・メロディ感覚はそのまま、しかし、これまで以上に自信に満ちたギター・ポップ感というか、ラフでラウドなリフものロックンロールというか、そういうテイストが強まっている。かっこいい。ブルー・エンジェルスの航空ショー、フェンダー・テレキャスター、ジュークボックスなど、歌詞に登場する小道具も、なんともアメリカ的で、どこか郷愁に満ちていて、でも思いきり皮肉で、いい感じ。
楽曲の幅も広がって、ノイズ+サーフィン/ホットロッド的な展開が聞かれる「ビート・オヴ・ザ・ドラム」とか、ルーツ・ロック的なリフでゆるくグルーヴする「ポエット・イン・レジデンス」とか、しゃれたギター・コードに乗せてジャジーにつぶやかれる「クレイマー・イン・LA」とか、ジャングリーなギター・カッティングのみをバックに聞かせるハイパーな弾き語り曲「プラネタリウム」とか、サンシャイン・ポップふうの叙情的なミディアム・シャッフル「ウドゥント・イット・ビー・ナイス・トゥ・レット・イット・ビー」とか…。
その「ウドゥント・イット・ビー・ナイス・トゥ・レット・イット・ビー」、まずタイトルからして笑う。ビーチ・ボーイズとビートルズをシンプルに並べた狼藉寸前、豪球ど真ん中的アティテュード(笑)。でも、歌詞からは“ありのままでいるなんて素敵じゃないか/髪をほどきなよ”とか“ここですることは何もない/ここには見るものもない/泣きたくなるものも何もない”とか、けっこう気になる表現も聞こえてきたりして、ぐーっと引き込まれる。そういえば「キース・アンド・テレキャスター」ってタイトルも、なんか妙に気になった。ピーター・ギルのやばめの妄想力、相変わらず全開だ。
『イージー・リスニング』という斜に構えたアルバム・タイトルにしてはいるけれど、自分たちの音楽の方向性みたいなものをつかめたぞという確信が伝わってくる意欲作です。ラストに収められたそのタイトル・チューン、これまたエレキ・ギターの弾き語りで綴られた1曲で。最後、余韻が静かにテープ・ヒスにさりげなく呑み込まれていく感じとか、なんか深いなぁ。
フィジカルはアナログLPのみみたい。限定カラー・ヴァイナル。ほしい。でも、高い。円安が恨めしい…。