Disc Review

Til It’s Gone / Ali McGuirk (Signature Sounds Recordings)

ティル・イッツ・ゴーン/アリ・マッガーク

ざっくり言うと、古き良きR&Bの影響下にあるソウルフルな感覚と往年のフォーク系シンガー・ソングライターの繊細さとが合体したような、つまり1970年代にちょいちょい見かけたタイプの女性アーティスト、アリ・マッガーク。2017年の自主制作盤『スロウ・バーン』に続くセカンド・アルバムが出ました。今回はシグネチャー・サウンドと契約してのリリース。本格的デビュー作と言うべき1枚なのかも。一聴して、なんだか懐かしいような、でもきっちり今の時代の歌声としても機能している手触りに、じんわり沁みてしまいましたよ。

アリさんは米マサチューセッツ州ボストン生まれ。1990年代にはコンテンポラリーなR&Bをよく聞いていたらしいが、やがて1970年代のシンガー・ソングライターや、いわゆるクラシック・ソウルなどにも興味を持つようになり、さらにはジャズのトーチ・ソングなどにも接したり、自ら歌ったりしながら育ったという。現在はヴァーモント州バーリントンが本拠。ただ、本作のレコーディングの大半はロサンゼルスで。先日、日本でも5作目のアルバム『ラヴァ・ランプ』(Amazon / Tower)が出たばかりのアメリカーナ系シンガー・ソングライター、ジョナー・トルチンとの共同プロデュース作品だ。

基調としては前述の通り、いわゆるシンガー・ソングライター的な1枚なのだけれど、それをかつて1970年代にリトル・フィートが実現していたような、ファンキーで、ジャジーで、でもどこかカントリー的で、トゥワンギーで…。そういった多彩なフィールが魅力的に交錯するアルバムに仕上げたい、と。そういう思いで作られたようで。

そんな思いゆえか、ゲスト・プレイヤーとして現リトル・フィートのフレッド・タケット(ギター)が参加。彼はレコーディングの際、かつてリンゴ・スターやハリー・ニルソンとレコーディングしたときのエピソードとかも気さくにたくさん話してくれたそうで、1960〜70年代の音楽が大好きなアリさん、大喜びだったという。

フレッド・タケットの他にも、ラリー・ゴールディングス(オルガン)、レニー・カストロ(パーカッション)、そしてチャプター8のメンバーとして、あるいはレイ・チャールズやルーサー・ヴァンドロスとの仕事でも知られるヴァレリー・ピンクストン(コーラス)などが顔を揃え、的確にアリさんの深くソウルフルな歌声をサポートしている。

全9曲、アリさんの自作。メロウなソウル寄りのものから、フォーキーもの、カントリー・ロックもの、ジャジーなものなどを経て、ハードなギターがむせび泣くパワー・バラードまで。多彩な音楽遍歴を反映したナンバーが並ぶ。

おっきく成長していってほしい個性です。こちらも10月くらいに国内盤(Amazon / Tower)出るみたいです。

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