ジャックポット/ブライアン・シャレット
これ、7月に出ていたのね。気がつかなかった。ごきげんなジャズ・オルガン・プレイヤー、ブライアン・シャレットの最新作。2カ月遅れではありますが、あわてて昨日から聞きまくっております。
ジョーイ・デフランセスコや、ラリー・ゴールディングス、マイク・ルドーン、ジョン・メデスキあたりとともに現代のオルガン・ジャズ・シーンを牽引する存在。そんなシャレットさんが去年の11月、コリー・ウィード(サックス)、エド・チェリー(ギター)、ビル・スチュワート(ドラム)を率いて米ニュージャージーのルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオへ。ブルーノートやプレスティッジからリリースされたジャズの名盤を数々生み出した名門スタジオで躍動的なセッションを繰り広げた模様の記録だ。オルガン・プレイヤーがベース・ペダルもプレイする伝統的オルガン・トリオにサックスが加わったクァルテット編成。たまらない。
全9曲、シャレットのオリジナル新曲。とはいえ本作でのシャレットさん、あえて“えっ、どこが新曲?”というような、もう、ジミー・スミス、ジャック・マクダフ、メルヴィン・ライン、ドン・パターソン、ラリー・ヤングといった偉大な先達ジャズ・オルガン奏者の伝統を受け継ぐスウィンギーでソウルフルでジューシーでグルーヴィなハード・バップ・チューンばかりを提示してきた。アルバムのEPKの中で本人もその辺についてはいろいろ語ってますが。このナチュラルさは歓迎したい。
まあ、今さらここに何か新しいものがあるわけではないのも事実だけれど、“新時代の空気感を、新たなグルーヴを…”みたいな曖昧な強迫観念の下、やみくもにジャンルを超えて混沌へと身を投じる系でないと評価されにくい昨今のジャズ・シーンにあって、こういう往年のフォーマットに最大限のリスペクトを払った、ある種まっすぐな新作に出くわすと、お古いファンとしてもうれしくなってしまう。
ジャズに限らず、新しさを模索する動きと過去をリスペクトする動きと。どっちも等価値にかっこいい。両輪で歩んでもらわないと、ね。