ラーニング・ハウ・トゥ・スウィム/マッキン・キャロル
マッキン・キャロル。素性は全然知らないのだけれど。数年前からサウンドクラウドとかを駆使してあれこれ作品を発表してきた人みたい。ロサンゼルス郊外育ちらしきポップなシンガー・ソングライター。2016年と2019年に1枚ずつ、3〜4曲入りのEPを発表しているものの、フル・アルバムとしては本作『ラーニング・ハウ・トゥ・スウィム』が初だ。
ぱっと聞き、ベン・フォールズ・ファイヴとか、ウィーザーとか、ウィルコとか、ブライト・アイズとか、デス・キャブ・フォー・キューティーとか、ディセンバリスツとか、スフィアン・スティーヴンスとか、いろいろな名前が脳裏に交錯する。そういう聞き方しちゃ申し訳ない気もするけれど、いや、むしろそういう影響を聞き取って! と本人が主張しているような気もしなくはなくて。そのあたりの塩梅が、なんだか楽しい。
幼年期の鬱を告白してみたり、見果てぬブラックホールのイメージを恋の終わりの予感に重ねてみたり、君のためなら何でもするよと朝食に冷凍イチゴを食べながら思ってみたり、日々のささいな習慣というか悪癖にひとつひとつシニカルな疑念を投げかけてみたり、ヴァンパイアの幻に悩まされた日々を描きながら不安と投影を歌ってみたり、どうにもならない胸の痛みや孤独感を切なく吐露してみたり…。不思議な暗喩と、浮遊感に満ちた旋律とが組み合わさって、なんともパーソナルな、内省的なポップ・ワールドを編み上げている。
繰り返しますが、全然素性がわからず(笑)。でも、わからないところにいろいろ面白い人がいるもんだなぁ…と、改めてうれしくなります。