ブレッシングズ・アンド・ミラクルズ/サンタナ
カルロス・サンタナが相変わらず熱いというか、暑苦しいというか(笑)。この人、やっぱすごいわ。
2年ちょい前、本ブログでも紹介した『アフリカ・スピークス』に続くサンタナの新作アルバム。前作リリース以降、大半の期間を本新作アルバムのために費やしてきたのだとか。新型コロナウイルス禍のただ中ではあったけれど、そんなことものともせず遠い地にいるミュージシャンともリモートで積極的に交流し、セッションを繰り広げ…。
“素晴らしいことに、今や同じスタジオにいなくても一緒にレコーディングができる。どこか別の場所で演奏しているプレイヤーでも、目を閉じれば同じ部屋にいるように感じられる。遠く離れていても同じ周波数を共有できるんだ”と、サンタナさんもご満悦だ。ポジティヴなおじいちゃんだ。
フィーチャード・アーティストは、かつて「スムース」の特大コラボ・ヒットを生み出したロブ・トーマスをはじめ、オゾマトリのアスドゥル・シエラ、クリス・ステイプルトン、アメリカン・オーサーズ、スティーヴ・ウィンウッド、アリー・ブルック、ダイアン・ウォーレン、G-イージー、リヴィング・カラーのコリー・グローヴァー、メタリカのカーク・ハメット、デス・エンジェルのマーク・オセグエダ、シティ・オブ・ザ・サンのアヴィ・スノウ、MVCA、この2月に亡くなったチック・コリアとその妻ゲイル・モランなど。リック・ルービンやナラダ・マイケル・ウォルデンも関わっている。さらにシンディ・ブラックマンやトミー・アンソニーらツアー・バンドの面々、および息子のサルバドール・サンタナ、娘のステラ・サンタナらの名前も。
こうした幅広い顔ぶれが、ロック、ブルース、ジャズ、ラテン、アフリカ音楽といったサンタナお得意の音楽ジャンルのみならず、レゲエ、ゴスペル、カントリーなど、実に多彩かつ雑多な音楽要素が乱雑に交錯するホットな音世界を構築。それを受けて、御大カルロス・サンタナが、もう聞けば一発でサンタナだとわかる、あの強烈にえぐいトーンのギターを扇情的にギュイギュイ弾きまくる、と。そういう1枚だ。そのプレイを浴びて、みんなもうバカみたいに盛り上がっていて、最高です。
パーカッション群とオルガンが凶暴なうなりをあげるインスト「サンタナ・セレブレイション」とか、サンプリングやシンセサイザーによるグルーヴも巧みに取り入れた「ルンバレーロ」とかではもちろん、レゲエ・グルーヴに乗ってスティーヴ・ウィンウッドがブルー・アイド・ソウル味を炸裂させる「青い影(A Whiter Shade Of Pale)」のカヴァーでも、アリー・ブルックがしっとり綴るダイアン・ウォーレン作のバラード「ブレイク」でも、チック・コリアとのスピリチュアルな「エンジェル・クワイア/オール・トゥゲザー」でも、カルロス・サンタナは黙らない。止まらない。空気などいっさい読むことなく、とにかく弾きまくり。熱くチョーキングしまくり。官能的にサステインかけまくり。きっといつものように顔もくしゃっと歪めまくっているのだろう。サンタナは顔で弾くからね、ギターを。
ヴォーカルといちいち掛け合ってみたり、いやいや、それならまだ普通だけれど、ヴォーカルが歌っているのもおかまいなしに、でっかいボリュームでその上からオブリをかぶせまくったり、クールなラップの背後でうねうねしてみたり。聞きようによっては、やかましいことこの上なし。
でも、いいのだ。ぼくたちはこれを聞きたいのだから。これがサンタナなのだから。こうでなきゃサンタナじゃないから。今年で74歳。最近は元気なおじいちゃんミュージシャンたちも多いから、まだ74歳って感じ? 今後もさらなる弾きまくりを期待しつつ、サンタナが届けてくれた“祝福と奇跡”にひたります。