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Disc Review

Dolenz Sings Nesmith / Micky Dolenz (7A Records)

ドレンツ・シングス・ネスミス/ミッキー・ドレンツ

出た。ファンの間では以前から噂になっていた好企画盤。モンキーズのミッキー・ドレンツがバンド仲間であるマイケル・ネスミスのオリジナル・ソングを歌う新作だ。しかも、モンキーズと縁の深いハリー・ニルソンが、1970年、アルバム1枚まるごとランディ・ニューマン作の楽曲のカヴァーで構成した大傑作『ニルソン・シングス・ニューマン』に倣い、『ドレンツ・シングス・ネスミス』と題されて…。

これは楽しい。むちゃくちゃ楽しい。アルバム・ジャケットも完全に『ニルソン・シングス・ニューマン』へのオマージュで。ちなみに、あちらでは楽曲の作者であるランディ・ニューマン自身がピアノでバックアップしていたけれど、こちらはマイク本人ではなく、彼の息子であるクリスチャン・ネスミスが全編をプロデュース/アレンジ。去年の9月から今年の2月にかけて、幅広いアイディアを取り入れつつ、父親の作品を新鮮な視点から再構築してみせた。

ご存じの通り、モンキーズのオリジナル・メンバーのうち、デイヴィ・ジョーンズは2012年に、ピーター・トークは2019年に、残念ながらそれぞれ他界。今や元気なのはミッキーとマイクだけになってしまった。今年の後半には二人でモンキーズとしてのフェアウェル・ツアーを行なうと発表されているけれど、そんな残された二人が絡んだ新作アルバムがこうして届けられたわけで。ファンとしてはやっぱりうれしい。

ミッキーにとっては2012年の『リメンバー』以来9年ぶりの新作フル・スタジオ・アルバム。彼がハリー・ニルソンのアルバムに触発されてマイクの楽曲集を作りたいと思い、マイクに相談を持ちかけたのは、デイヴィ他界後、マイクとピーターと3人でモンキーズのツアーに出たときだったというから、たぶん前作の制作を終えた直後ということになるのだろう。

『リメンバー』もビートルズやらスリー・ドッグ・ナイトやらブレッドやらアーチーズやら、さらにはモンキーズの往年のレパートリーまで、いろいろな名曲をカヴァーしまくった1枚だったけれど。だったら、もっとストレートに、全編親友の自作曲で構成したアルバムを作ってもいいのでは…? と思ったのかな。

といっても、マイク作のおなじみの楽曲ばかりを安易に並べたわけじゃない。そこがまた素晴らしい。ミッキー・ドレンツが歌うマイケル・ネスミス作品集ということであれば、普通に考えれば、たとえばモンキーズ時代の「メリー・メリー」とか「パパ・ジーンズ・ブルース」とか「どこかで知った娘(The Girl I Knew Somewhere)」とか「すてきなミュージック(Listen to the Band)」とかを取り上げたほうがいいはず。あるいはマイクがモンキーズ脱退後、ファースト・ナショナル・バンドを率いて放った「ジョアンナ」とか「シルヴァー・ムーン」とか「ネヴァダ・ファイター」とか、そのあたりのヒット曲群とか。

ところが、今回はあえてそこを外した選曲になっている。すごい。誰もが知っている象徴的な大ヒットを取り上げるとカラオケ・カヴァーみたいになりがちだし、それは絶対にいやだった…と、ミッキーは語っている。なるほど。そうしたこだわりの下、旧友のことを知り抜く男ならではの的確な選曲センスが存分に発揮された、素晴らしいマイケル・ネスミス作品集が完成したわけだ。

いちおう、収録曲の素性をざっくり振り返っておくと――

「カーライル・ホイーリング」はモンキーズで1967年にレコーディングしたものの、当初はお蔵入り。1970年にマイケル・ネスミス&ザ・ファースト・ナショナル・バンドのアルバム『シルバー・ムーン(Loose Salute)』で「恋のカンバセーション(Conversations)」と改題されて世に出た曲。

「悲しきロック・ビート(Different Drum)」はまず1966年にグリーンブライアー・ボーイズが、翌1967年にリンダ・ロンシュタット&ザ・ストーン・ポニーズがレパートリーに取り入れた名曲だ。マイク自身も1972年、ペダル・スティール奏者のオーヴィル“レッド”ローズとのコンビで録音したアコースティック・アルバム『キープ・オン(And the Hits Just Keep on Comin')』でセルフ・カヴァーしていた。

「待つのはおやめ(Don't Wait for Me)」はモンキーズが1969年のアルバム『インスタント・リプレイ』で発表した曲。「キープ・オン」は前述、マイクの1972年の同名アルバムの収録曲。「マリーのテーマ(Marie’s Theme)」は1974年、マイクが自らが設立したレコード会社“パシフィック・アーツ”からはじめてリリースしたアルバム『ザ・プリズン』の収録曲。

「ナイン・タイム・ブルー」はモンキーズが1968年に録音したものの、やはり当初はお蔵入り。1970年、マイケル・ネスミス&ザ・ファースト・ナショナル・バンドのアルバム『マグネティック・サウス』で世に出た。「リトル・レッド・ライダー」も同じ『マグネティック・サウス』の収録曲。「トゥモロウ・アンド・ミー」はまたまた1972年の『キープ・オン』より。「サークル・スカイ」はモンキーズ、1968年の実験的映画サウンドトラック・アルバム『ヘッド』の収録曲。

「近親(Propinquity)」も、もともとはモンキーズが1968年に録音したものの、当初ボツっていた曲。初出はニッティ・グリッティ・ダート・バンドによる1970年のアルバム『アンクル・チャーリーと愛犬テディ(Uncle Charlie & His Dog Teddy)』でだった。「タピオカ・ツンドラ」はモンキーズが1968年、アルバム『小鳥と蜂とモンキーズ(The Birds, the Bees & The Monkees)』に収めた曲。シングル「すてきなバレリ(Valleri)」のB面曲としてもおなじみだろう。

「オンリー・バウンド」はマイケル・ネスミス&ザ・ファースト・ナショナル・バンド名義の1971年のアルバム『ネヴァダ・ファイター』収録曲。で、「ユー・アー・マイ・ワン」はマイケル・ネスミス&ザ・セカンド・ナショナル・バンド名義で出た1972年のアルバム『第一反抗期(Tantamount to Treason, Vol. 1)』の収録曲だ。ぼくは今回、ターコイズブルー色のカラー・ヴァイナルLP(Amazon / Tower)ってのを買っちゃったので、収録曲はここまで。CDだともう1曲、アルバム『ネヴァダ・ファイター』のオープニング・チューン「グランド・アンニュイ」がボーナス追加されているみたい。しまった…。

ミッキーの充実したカヴァーでこれらマイクの作品群に接してもらって、さらにマイク自身の、あるいはモンキーズによるオリジナル・ヴァージョンに立ち返ってみてもらえたらうれしいなと、まあ、どの立場からの発言だ…って感じではありますが(笑)、マイケル・ネスミスの音楽性をこよなく愛するファンのひとりとして、そんなことを思ったりもします。

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