Disc Review

The Mothers 1971 (8CD Super Deluxe Edition) / Frank Zappa & The Mothers (Zappa Records/UMe)

ザ・マザーズ1971(50周年記念8CDスーパー・デラックス・エディション)/フランク・ザッパ&ザ・マザーズ

3月21日発売の『ナイアガラ・トライアングルvol.2』40周年記念リリース。例の超マニアックなボックス(Amazon / Tower)とか、通常盤2枚組(Amazon / Tower)とか、アナログ(Amazon / Tower)とか、もろもろ、休日の関係とかあって、今日あたりお店行けばフラゲできるはず。いやー、大変だ。ソワソワしている人も多いことでしょう。

40年前に『ナイトラ2』が出たころ、ぼくは出版社をやめたばかりで。こういう音楽関係の仕事を見よう見まねで始めてまだ1年弱。超ひよっこながら、その前年、先行シングル「A面で恋をして」が出る際に大滝詠一、佐野元春、杉真理のお三方が勢揃いしてソニーのスタジオでやった合同記者会見みたいなやつに出席させてもらったり、あちこちの雑誌に原稿を書かせてもらったり。まだ何にも思うようにできていなかった時期ではあったものの、すべてが新鮮な体験ばかりで。いろいろ鮮明に覚えてます。なんとも懐かしい限り。

まあ、その辺りに関しては、ボックス開封の儀とかも含めて、3月21日の無観客配信CRTのほうでたっぷりお届けする予定なので、ぜひそちら、ツイキャスでお楽しみいただければ、と。今回、ボックスのブックレットにも再録された大滝・佐野・杉の30周年レココレ鼎談の際のこととかもいろいろお話ししたいです。そこには聞き手のぼくも、編集担当のレココレ袮屋くんも同席していて…。

実は袮屋編集長、昨今の新型コロナまん延のバタバタで、本人は陰性なものの濃厚接触うんぬんってことで今回、配信の現場には直接来られないことになってしまったのですが。たぶんリモートって形で配信に参加はできると思うので、10年前のこととか、あれこれ思い出してもらいましょう。そこら辺は月曜日に! てことで、今朝のブログは本日リリースの、また別のゴツい発掘音源ボックスものを紹介しておきます。

フランク・ザッパ&ザ・マザーズ!

この名義が初めて使われたことでおなじみのライヴ・アルバム『フィルモア・ライヴ’71(Fillmore East – June 1971)』。1971年6月5日と6日、ニューヨークのフィルモアイーストで両日2ステージずつ行なわれた計4公演からの音源で構成された傑作ライヴ盤だったけど。その発売50周年を記念するボックスが出ました。それが本作『ザ・マザーズ1971』。

相変わらず怒涛の未発表音源の発掘ラッシュが続くザッパ。CD6枚組の『ザ・ホット・ラッツ・セッションズ』とか、2枚組ライヴ『ザッパ’88:ザ・ラストU.S.ショー』とか、6枚組の『200モーテルズ:50周年記念エディション・スーパー・デラックス・ボックスセット』あたりは本ブログでも取り上げてきた。タイミングが合わず紹介しなかったけど、1970年のラインアップによるマザーズのライヴおよびスタジオ音源を詰め込んだ4枚組『ザ・マザーズ1970』ってのもあった。

で、今回の『ザ・マザーズ1971』。とうとう8枚組。元になっている『フィルモア・ライヴ’71』はLP1枚もので。AB面の分かれ目でフェイドアウト〜フェイドインしていた「ウィリー・ザ・ピンプ」をそれぞれ別曲と捉えれば全12曲入り。1曲、長くて7分、大方が2〜3分。次から次へと曲想を奔放に変化させながら息もつかせぬ勢いでメドレーのようにがんがん展開していくザッパ・ワールド。アバンギャルドでジャジーでプログレッシヴでブルージーでソウルフルでシアトリカルでシニカルでブラックで…。当時のザッパ/マザーズがやりたいことのすべてがここにある! とか、わかったようなこと思いながら愛聴してきた盤だったのだけれど。

今回、この8枚組のCD1から6までに収められた2日間4ステージの全貌を聞いて、腰が抜けた。ザッパ(ギター)、イアン・アンダーウッド(サックス、キーボード)、ボブ・ハリス(キーボード)、ドン・プレストン(ミニ・モーグ)、ジム・ポンズ(ベース)、エインズリー・ダンバー(ドラム)、そしてフロ&エディことマーク・ヴォルマンとハワード・ケイラン(ヴォーカル)という顔ぶれからなる当時のマザーズ、凄まじい。濃厚。『フィルモア・ライヴ’71』はこの2日間のほんのダイジェストに過ぎなかったことを思い知った。

もちろん同じ曲が各ステージでダブって演奏されたりもしているのだけれど、全ヴァージョンが面白い。「ビリー・ザ・マウンテン」のような30分超えの長尺曲もばりばり。キメもバキバキ。スリリングなインプロも満載。むちゃくちゃ違う展開になることもあれば、絶対に間もタイミングも変えない緻密なやりとりもあり。メドレーっぽく連なっていた曲の切れ目も、あ、この曲ってこっからここまでだったの? 的な感じで、実は全然違っていたりするし、だいたいセットリストの構成自体まるで違うし。今さらながら思いきり新鮮に楽しめる。

前述の通り、CD1から6の途中までがこの2日間4ステージの全貌。ジョン・レノンの『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』に収められていた6日の2ステージ目、ジョン&ヨーコを迎えて披露されたアンコール音源6曲も完全収録されている。で、CD6の中盤には同時期のシングルのAB面曲や、当時のラジオCMのアウトテイクとかが入っていて。

CD6後半からCD7の途中までが、ニューヨーク公演に先駆けて行なわれたペンシルベニア州ハリスバーグとスクラントンでのライヴ音源を使って当時のライヴを再構築したもの。その後からCD 8いっぱいは、同年12月、演奏を終えたザッパが暴漢に襲われステージから落下、負傷して以降のツアーがキャンセルとなってしまった英ロンドン、レインボー・シアターでの伝説的ライヴの完全収録盤。ほぼ全部、最新リミックス/リマスター。ブックレットにはアーメット・ザッパによるイアン・アンダーウッドへのインタビューをはじめ、エディ・クレイマーやジム・ポンズ、ジョー・トラヴァーズらによるライナーノーツを満載。読みでがありそう。まだ読んでませんが(笑)。

ちなみにこのボックスの他に、オリジナルLPのリマスター盤にジョン&ヨーコとの音源、シングル音源、ラジオ・スポットなどを追加した3枚組LP『Live at Fillmore East, June 1971 50th Anniversary』(Amazon / Tower)もあり。CDでは聞けない当時のザッパ・ミックスも入っているらしい。やばい。さらにレインボー・シアター公演を収めた同じく3枚組LP『Live at Rainbow Theatre』(Amazon / Tower)も。なんか、WEBストアとかでチェックする限り、ボックスのフィジカル発売が4月に延びているみたいなのだけれど、サブスクのストリーミングとかダウンロード販売とかはスタートしているので、とりあえずはそっちで盛り上がりましょう。

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