ロング・アズ・アイ・ガット・マイ・ギター/ザック・ハーモン
一昨年の夏、『ミシシッピー・バーベキュー』というわりと拾いものっぽい佳盤をリリースしてくれたザック・ハーモン。2年ぶりの新作、出ました。
そちらのエントリーでも書いた通り、この人、1970年代末にZ.Z.ヒルやドロシー・ムーアのバックでギターを弾くようになったのをきっかけに、ブラック・ウフル、イヴリン“シャンペーン”キング、フレディ・ジャクソン、ケーシー&ジョジョ、オージェイズ、ウィスパーズ、カリン・ホワイト、アレクサンダー・オニールなどと仕事するセッション・ミュージシャン/ソングライター/プロデューサーとして活躍するようになって。1994年にはグラミーにもノミネートされた。
で、2002年、40歳を過ぎてからアルバム『ライヴ・アット・ベイブ・アンド・リッキーズ・イン』でいよいよ遅咲きのソロ・デビュー。バック・バンド、ザ・ミッド・サウス・ブルース・レヴューを従えて、ブルース寄りのフィールドで躍動的な歌とギターを聞かせるように。以降、様々なブルース・アワード系を多数制覇し、着実にアルバム・リリースを重ねながら現在に至る、と。
で、今回のアルバムも前作に引き続き、サンタナ、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョージ・サラグッド、タワー・オヴ・パワーなどとの仕事でもおなじみ、グラミー・ウィナーでもあるベテラン、ジミー・ゲインズがプロデュースを担当。テキサスの国境の町、トーニロにあるソニック・ランチ・スタジオでレコーディングされた。
所属するキャットフード・レコードの主でもあるベーシスト、ボブ・トレンチャード率いるザ・レイズがこれまた前作同様がっつりバックアップ。ハーモンのツアー・バンドの面々も参加しているようだ。曲作りも基本的には引き続き、ハーモン&トレンチャード作。全10曲中7曲を共作している。他は、ジム・ゲインズ人脈のサンディ・キャロル&マーク・ナーモア作品が2曲、そしてコーラスで参加しているコリー・レイシーとハーモンの共作が1曲。
スタックスふうのファンク・ブルースあり、B.B.キングやロバート・クレイを想起させるマイナー・ブルースあり、アコーディオンが印象的なティアドロッパー系ケイジャン・バラードあり、フィリーっぽいしゃれたコード進行のメロウ・グルーヴあり…。曲ごとにけっこう振り幅広く曲調を変えながら、前作同様、のびのびと個性を発揮している。
新しさとかまるでない、かな(笑)。というか、そんなことどうでもいいかも。1960〜70年代に花開いた鉄壁のソウル・フレイヴァーがここには確実に生き続けていて。少なくともぼくは、それを今なお求めていて。それにそれなりに応えてくれる新作がこうしてリリースされるほのかな幸せ。今のところフィジカル売ってるところは自身のWEBショップ以外見たことがなくて、他はデジタル・ダウンロードおよびストリーミングのみみたいだけど、とりあえず満喫しております。