リトル・ブラック・フライズ/エディ9V
イーライ“ペイパーボーイ”リードのようでもあり、ニック・ウォーターハウスのようでもあり、デューク・ロビラードのようでもあり、往年のエディ・ヒントンのようでもあり、マイケル・ブルームフィールドのようでもあり、ジェレミー・スペンサーのようでもあり…。と、まあ、要するに、なかなかに痛快で、ちょっとオタクっぽいけど好感が持てる白人ブルース/R&B野郎、と。そういうことです。
“Eddie 9V”と書いて“エディ・ナイン・ヴォルト”と読む。9ボルトって、9ボルト電池のことかな。いいね。ギター小僧って感じだね。エフェクターとか持っていなさそうだけど(笑)。
本名は全然違って、メイソン・ブルックス・ケリー。ジョージア州アトランタ出身。なんでも、15歳のころに勉強を続けることもカタギの仕事につくことも拒否して、地元のブルース・クラブ・サーキットへの参戦を表明。もちろん最初のうちはまだ子供だからということでクラブの店内に入れてさえもらえなかったらしい。けれど、徐々にその情熱が周りにも伝わり、ライヴを開始。ホットでディープなギグが評判を呼び、やがてシーンを牽引する頼もしい存在へと成長した。
2019年、22歳のときに晴れてアルバム『レフト・マイ・ソウル・イン・メンフィス』でレコード・デビュー。去年、クラブ“ブラインド・ウィリーズ”で収録したごきげんなライヴ・アルバム『ウェイ・ダウン・ジ・アリー』をリリースして。その後、デジタル・シングルとかを間に挟んで、今年、フル・アルバムとしては3作目にあたる本盤『リトル・ブラック・フライズ』を完成させた、と。
いつものように、兄弟であり、ソングライティング・パートナーであり、プロデューサーでもあるレイン・ケリーとがっちりタッグを組んで、去年の9月から11月、ミュージシャン仲間を引き連れアトランタのエコー・デコ・スタジオへ。全員でブースに入り、ほぼ一発録りで制作したものだとか。
クレジットを見ると、ベースが3人。全12曲中4曲にテデスキ・トラックス・バンドのブランドン・ブーンの名前があるのが、なんだかうれしい。リズム・ギターにコディ・マトロックのクレジットもあるけれど、これ、今年のアタマに「レインズ・イン・ザ・サマー」ってかっこいいブルー・アイド・ソウル・ナンバーを発表していた人かな。
アルバート・キングの「トラヴェリン・マン」、ジミー・リードの「ユー・ドント・ハフ・トゥ・ゴー」など、たぶんライヴでよく取り上げているのであろうカヴァー曲が少し。あとはほぼすべてエディ9Vとレイン・ケリーの共作曲だ。ボビー・マーチャンふうあり、ジェイムス・カーふうあり、マディ・ウォーターズふうあり、エルモア・ジェイムスふうあり。楽しい楽しい。
まだ24歳。空回りしている部分もなくはない。粗いっちゃものすごく粗い。けれど、かまいません。数日前、ザ・ウェイト・バンドに対して送ったエールと一緒だけど、めげず、へこたれず、さらなる痛快な境地めざしてがんがん突っ走ってね。