ドライヴァー/アダルト・マム
新作リリースに合わせて、改めて最新情報をゲットしたいなと思って、このアーティスト名、いちおうカタカナでも検索してみたんだけど。ダダーッとAV関係の検索結果ばかり画面に並んで、笑った。
というわけで、日本語による最新情報はほとんど入手できずじまいのままではありますが(笑)。今朝はアダルト・マムの新作、紹介しておきます。ニューヨーク本拠のスティーヴィー・ナイプ嬢が2012年、大学生のとき自宅のベッドルームでソロ・プロジェクトとしてスタートさせたアダルト・マム。最初のころはEPばかりがんがんリリースしていたけれど。2015年に初フル・アルバム『モーメンタリー・ラプス・オヴ・ハッピリー』を出した後、オリヴィア・バッテル(ドラム)とアレグラ・アイディンガー(ギター)を迎えた3人組バンドへと発展して、2017年にセカンド・フル・アルバム『ソフト・スポッツ』を出して…。
ただ、2019年、スティーヴィーはロイヤリティ未払いの件でそれまで在籍していたタイニー・エンジンズ・レーベルと大いにモメて。最終的にはなんとか和解。ちゃんと支払いも得て、マスター・テープも返還してもらって。晴れて名門エピタフ・レコードへと移籍。彼女たちにとって3作目のフル・アルバムにあたる久々の新作がリリースされた、と。そういう流れです。
去年、ダイエット・シグとかシャミールとかのアルバムも手がけていたカイル・プリーがスティーヴィーと共同プロデュース。プリーの本拠地、フィラデルフィアのヘッドルーム・スタジオでレコーディングされた。ベースもプリーが弾いているみたい。
というわけで、ことサウンド的にはプロジェクト初期のころのベッドルーム感はすっかりなくなって、外界で、ちゃんと他者と対峙しつつのパフォーマンスという感触の1枚に仕上がっている。ドラム・マシン(808かな?)やシンセサイザーもうまくバンド・サウンドと融合しながら、けっこう骨格のしっかりしたパワー・ポップ的なアンサンブルを構築している曲も多くて。かっこいい。
ただ、メロディそのもの、歌詞そのものは変わらずスティーヴィー・ナイプならでは。クィアであることをカムアウトしているスティーヴィーの、あけすけなんだか、内省的なんだか、複雑に屈折した世界観に貫かれていて。じわじわ引き込まれる。2015年以来夢見てきたクィア版ロマンチック・コメディのためのサウンドトラック…という記述も海外のインフォメーションには見受けられた。なるほど。
歌声もぐっと強くなって。新天地での再始動を祝福する素晴らしい1枚。シンガー・ソングライターとしてのスティーヴィー・ナイプの成長ぶりもきっちり感じ取ることができる充実作です。