Disc Review

Heritage II: Demos/Alternate Takes 1971-1976 / America (Omnivore Recordings)

ヘリテイジII:デモズ+オルタネイト・テイクス 1971〜1976/アメリカ

これ、出ていたの、全然気づいていませんでした。6月アタマにリリースされていたみたい。ストリーミングで配信されていなかったので、気づくのが遅くなってしまった。いかんいかん。最近はすっかりストリーミングに頼りきり。フィジカルのみのリリースにも気を配らないとね。てことで、遅まきながら紹介します。

「名前のない馬(Horse With No Name)」や「ヴェンチュラ・ハイウェイ」などのヒットでおなじみ、アメリカのデモ/別テイク集、第二弾。2017年に出た『ヘリテイジ:ホーム・レコーディングズ+デモズ 1970〜1973』の続編だ。2015年にも自身のレーベル“アメリカ・レコード”から同趣向の『アーカイヴス Vol.1』ってアンソロジーを出したこともあるので、第三弾と言ったほうがいいのかな。

いずれにせよ、以前ここで紹介した50周年記念コレクションのように、通常のオフィシャル・リリース・テイクに交じってデモとか別テイクが収録されることはそれなりにあるけれど、このシリーズは全部がデモか別テイクか未発表音源。なので、まあ、マニアにしかおすすめできないブツではあるのですが。でも、マニアにしてみればさらなるレアな宝物の発掘だ。見逃せません。

つーか、ぼくは完全に見逃してたんだけど…(笑)。

表題通り、今回は1971〜1976年の音源。中心となっているのは1972年にリリースされたセカンド・アルバム『ホームカミング』のためのレコーディング・セッションと、ジョージ・マーティンがプロデュースした1974年の『ホリデイ』と1976年の『ハイダウェイ』のセッション。

オープニングを飾るのは『アーカイヴス Vol.1』にも初期リハーサル・テイクが入っていた「空しきコーンウォール(Cornwall Blank)」のデモ。ちょっと歌詞が違っていたり、マニアックな発見もあり。ジョー・オズボーン&ハル・ブレインのバックアップぶりも楽しめる。で、それに続くのが1971年に録音された13分弱のアコースティック・ジャム「ジャマルーニー」と、ジェリー・ベックリー作の未発表曲「マンディ」のデモ。

個人的にはこの「マンディ」がいちばんの聞き物だった。基本的にはベックリーらしいメロディアスな楽曲なのだけれど、最初ピアノの弾き語りで始まって、徐々にビートルズっぽいホーン・セクションやアープ・シンセサイザーが重なってきて。中期ビートルズっぽいような、いや、聞きようによっては同時期のデニス・ウィルソンっぽいような、そんな味もあって。なんだかやけに興味深い。

以降が『ホリデイ』および『ハイダウェイ』セッション。まずはデューイ・バネル作「魔法のロボット(Tin Man)」のバック・トラック。これもむちゃくちゃ面白い。リード・ヴォーカルは入っていないのだけれど、バック・コーラスが思いきりフィーチャーされていて。そのアレンジにもビーチ・ボーイズの味わいが漂っていて。楽しい楽しい。

次がベックリー作の「ホワット・ダズ・イット・マター」のデモ、そしてダン・ピーク作の「ユー」のヴォーカル+ストリングス+シンセ・ヴァージョン。この辺も最高。ジョージ・マーティンのプロデュース・ワークの下、アメリカのメンバー3人がパフォーマーとして、ソングライターとしてぐんぐん成長していく様子が存分に味わえる。

で、ベックリー作の「マッド・ドッグ」のコーラス入りバック・トラックから、1975年、ピーター・フォンダが出演したテレビCMに使われ日本でのみ大いに話題になった「シンプル・ライフ」のカウント入り別ミックスへ。これもコーラスが際立っていて面白い。このあと「ラヴリー・ナイト」から『ハイダウェイ』セッションへ入っていくのだけれど。いやいや、書き連ねていくときりがないのでこの辺で。

前述した通り、アメリカは去年、50周年記念の50曲入りアンソロジーをリリースしたのだけれど。なんでも早ければ来月、アメリカはCD7枚+DVD1枚というボリュームのレア音源ボックスセットのリリースを計画しているそうで。50周年大作戦はまだまだ続きそうだ。ボックスのタイトルはずばり『ハーフ・センチュリー』。1970年から2000年までの未発表トラックとか、ライヴ音源とか、ラジオでのインタビューとか、初期の映像とかがてんこ盛りみたい。

五月雨式にではあるけれど、一気にお蔵出しって感じ。でも、次は2万円かぁ。回収にかかってるな。踊らされときますかね…。

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