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Disc Review

Tales of Wonder: A Jazz Celebration of Stevie / Various Artists (Posi-Tone Records)

テイルズ・オヴ・ワンダー:ア・ジャズ・セレブレーション・オヴ・スティーヴィー/テオ・ヒル、ジャレッド・ゴールド、ディエゴ・リヴェラ、ファーネル・ニュートンほか

1990年代半ば、ロサンゼルスを本拠地に誕生して以来、着実なペースで興味深いアルバムをリリースし続けているジャズ・レーベル、ポジ・トーン・レコードから、このほどめでたく70歳の誕生日を迎えたスティーヴィー・ワンダーへのトリビュート・アルバムがリリースされた。“A Jazz Celebration Of Stevie”というタイトル通り、同レーベルに所属するジャズ・アーティストたちによるスティーヴィー作品のカヴァー集。

収録曲はこのコンピレーションのために用意されたわけではなく、基本的に所属アーティストそれぞれのリーダー・アルバムなり、バンド名義で制作したアルバムなり、そうした既存のリリースからスティーヴィー作品をピックアップして集めた体裁になっている。そのため、ものによっては2009年録音とか2015年録音とか…。けど、大半が去年半ばの録音。そのことから想像するに、レーベル側がスティーヴィー生誕70年となる2020年を見越して、各アーティストにアルバムを制作する際はスティーヴィー作品を取り上げるよう要望しつつ音源を取りそろえて編纂した1枚なのかもしれない。

とはいえ、オリジナル・アルバム未収録のアウトテイクも1曲。まだ盤としては世に出てないアルバムに収録予定の曲の先行お披露目とかも2曲。ポジ・トーンの作品群はだいたい買っちゃってるからなぁ…なんて方も油断はできない。

それぞれのアーティストの個性がよく出たカヴァー揃い。オープニングを飾る「愛を贈れば(Send One Your Love)」はトニー・デイヴィス(g)とアレクサ・タランティーノ(as)をフィーチャーしたクインテット、ワークス・フォー・ミーによるストレート・アヘッド・ジャズ風味。続く「マイ・シェリー・アモール」はジョン・デイヴィス率いるピアノ・トリオもの。「スーパーウーマン」はテオ・ヒル(p)のフェンダー・ローズが心地よいブリージーな仕上がり。ウィル・バーナード(g)やベーン・ギリース(vib)、アート・ヒラハラ(p)らが組んだアイドル・ハンズによる「ユー・アンド・アイ」は軽いボッサ・フュージョン調。

先日こちらで紹介したデイヴ・ストライカー(g)を含むジャレッド・ゴールドのオルガン・トリオによる「悪夢(You Haven't Done Nothing)」はもちろんごきげんにファンキーなオルガン・ジャズ。ディエゴ・リヴェラのソプラノ・サックスで綴られた「シークレット・ライフ(The Secret Life of Plants)」は静謐なフュージョン。ファーネル・ニュートン(tp)の「恋(All in Love Is Fair)」はブライアン・シャレットのオルガンがむちゃくちゃソウルフルにバックアップするゴスペル風味。そしてラスト、再登場のベーン・ギリースも参加するクインテット、アウト・トゥ・ディナーによる「愛の国(Visions)」はギリースのヴァイブラフォンの響きが美しいアコースティック・ジャズ。

ほぼ1970年代にスティーヴィーが発表した曲ばかりだけれど。多様なスタイルで当時のスティーヴィー作品の魅力を再構築して聞かせてくれる。まじ、あのころのスティーヴィーの曲は神がかっているというか。どんな切り口から料理されても名曲度が薄まらないというか。そんなことを改めて思い知る。めでたく70歳を迎えた希代のミュージック・クリエイターの底力を別アングルから再確認するには悪くないコンピレーションではないか、と。

と、同時に、ポジ・トーン所属アーティストのお披露目サンプラーとしてもそれなりに機能しそう。というか、レーベルにしてみればそっちが主眼?

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