Disc Review

It Ain’t the Same / Jack Klatt (Yep Roc)

イット・エイント・ザ・セイム/ジャック・クラット

ミネアポリスのオールド・タイミーなシンガー・ソングライター、ジャック・クラットのニュー・アルバム。たぶんこれが3作目だ。

2013年に自ら奏でる達者なアコースティック・ギターの弾き語りを基調にしたグッド・タイム・ミュージックというか、カントリーというか、ブルースというか、そういうアルバム『ラヴ・ミー・ロンリー』でレコード・デビュー。続く2016年の『シャドウズ・イン・ザ・サンセット』ではドラム、ウッド・ベース、フィドル、ラップ・スティール、アコーディオンなどを導入したアコースティックなバンド編成で、これまたまるで1930年代にいるかのごとき音楽を渋くキメて。

ただ、それらはほとんどダビングも何もなしの一発録り。ちゃんとしたトラックダウンもせずに、アルバム1枚3日で完成、みたいな。そういう感じだったらしい。それもそれでよかったけれど、今回はもうちょい何かないか、と。自分が好きな音楽はそういうシンプルなものだけじゃなくて、もっとグルーヴィなロックンロールとか、ルーズなカントリー・ロックとか、しゃれたコード進行を伴ったポップ・チューンとか、そうした他の音楽性にも挑戦したい、と。

それで、NRBQのケイシー・マクダナフがベース、ザ・デスロンズのジョン・ジェイムス・トゥアーヴィルがギターとペダル・スティール、JDマクファーソンとかロビー・ファルクスとかと一緒にやっているアレックス・ホールがドラム、キーボード、という頼もしい顔ぶれを召集。本人がギターとヴォーカルとプロデュースをして、カクタス・ブロッサムズのジャックとペイジもゲスト参加して、ていねいにレコーディングして。必要なダビングもちゃんとやって。時間をかけてトラックダウンをして。

それで完成した1枚だ。といっても、ぱっと聞きの印象はまるで一発で録ったみたいにシンプルでかっこいいアルバム。でも、そういう一発っぽいグルーヴをちゃんと盤面に定着させるためには、実はいろいろ細かく作業しないといけないってことの証なのだろう。

そんな感じのバンド・サウンドを従えたことから、イメージ的にはジョン・ハイアットあたりに近づいた感じ。いや、レーベルもYep Rocだし、ニック・ロウのほうに近いか。ただ、ニック・ロウは、往年の異国文化であるアメリカ音楽好きのイギリス人。それと違って、この人はアメリカ人なわけで。なのに、ニック・ロウと同じ感触のマニアックなひとひねりというか、ひとねじれというか、そういうものが自国の文化であるはずのアメリカ音楽に対して感じられて。その辺がいちばん面白いポイントだ。

たぶん、時代性から来るものなのだろう。というのも、この人の場合、世代的にまずランシドを好きになって、やがてクラッシュにハマって、その流れでボブ・マーリーから、ボビー・フラー・フォー、さらにはウディ・ガスリーを聞くようになり、ソーシャル・ディストーションに導かれてカントリーへの道に足を踏み入れた…みたいな感じらしく。

そういう意味ではニック・ロウのような異国人と同質のプロセスを経て伝統的なアメリカ音楽にたどり着いた、みたいな。ある種回りくどい道のりをたどった探訪の歩み。それが曲のそこかしこに見え隠れしているようで、なんだかたまらない1枚だ。アルバム・タイトル・チューンのみジョン・ジェイムス・トゥアーヴィル作。あとは本人の作品。

このイカれまくった世の中を生き抜くにはどうすればいいのか…。目も当てられない混乱が渦巻く現在のアメリカで危機感を抱きながら暮らさざるをえない者からのストレートな問題提起と、それに対する超楽観的な、歌を共有して乗り越えようぜ的メッセージが歌詞に託されていたりして。無責任っちゃ無責任だけれど、これもまた音楽の力かと納得させられちゃうところがこの人の魅力かも。

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