フロム・マッスル・ショールズ/フォイ・ヴァンス
エド・シーランとの深い交友とか、エルトン・ジョンがオープニング・アクトに抜擢したこととか、いろいろ話題になっている北アイルランド出身のシンガー・ソングライター、フォイ・ヴァンス。ハンチングと独特のお髭が印象的なおっさんですが。シーランが立ち上げたジンジャーブレッド・マン・レコーズからの第2弾、通算4作目のアルバムが出た。6月末のリリースだけど、ちょっと遅ればせながらのご紹介を。
2016年に出た前作『ザ・ワイルド・スワン』は米国ナッシュヴィルのブラックバード・スタジオでの録音。フォーキー系、ゴスペル系、ブルージーなロック系など、多彩なアプローチでブルース・スプリングスティーンやレイ・ラモンターニュ、同郷のヴァン・モリソンあたりを想起させる強力な歌声を聞かせてくれていたけれど。それに続いて、今回はタイトル通り、米国アラバマ州マッスル・ショールズのフェイム・スタジオでの録音。
伝説のハウス・バンド、スワンパーズのオリジナル・メンバーとしても知られる名手、スプーナー・オールダム(キーボード)やデヴィッド・フッド(ベース)もバックアップ。ギターはアラバマ・シェイクスのヒース・フォッグ。オルガンおよびミキシング・エンジニアをつとめているのは、やはりシェイクスのサポート・メンバーとして欠かせないベン・タナー。ホーン・アレンジはマッスル・ショールズ・ホーンズの一員として60年代から活躍してきたベテラン・トロンボーン奏者のチャールズ・ローズ。コーラスに、やはりシェイクスと活動しているシャネイ・ジョンソンやカリタ・ロウの名前も見える。
と、仕込みは本格的だ。憧れの地で、ずばり“ソウル”をテーマに自作した全10曲。往年のマッスル・ショールズ・サウンドを再現しつつ、持ち前の真摯な歌声を聞かせてくれる。これが6月末に出たアルバムで、9月になると今度は“アメリカーナ”をテーマに据えた『トゥ・メンフィス』というアルバムをすかさずリリースするのだとか。すでにApple MusicとかSpotifyで3曲が先行配信されているけれど、それを聞く限り、またまたヴァン・モリソンにも通じるカントリー・ソウル系の傑作になりそうな予感。
本作と合わせて、“フロム・マッスル・ショールズ・トゥ・メンフィス”。フォイ・ヴァンスなりのソウルとアメリカーナの旅だ。期待できそうっすね!