Disc Review

Make the Most of Every Moment / Graham Dee (Acid Jazz Records)

メイク・ザ・モスト・オヴ・エヴリ・モーメント/グレアム・ディー

今朝、ご紹介するのは再発もの…というか、配信によるリイシューもの。フィジカルでの再発は5〜6年前、韓ビッグ・ピンク・レコードを通じて実現しており、その流れでヴィヴィドから国内盤も出たのだけれど。そのストリーミングが7月末に Apple Music や Spotify でスタートしたので、お知らせを兼ねてのピックアップです。ロンドン出身のグレアム・ディーが1977年にパイ・レコードからリリースした佳作オリジナル・アルバム『メイク・ザ・モスト・オヴ・エヴリ・モーメント』。

ディーさん、もともとは1960年代、ブライアン・ポーターやドニー・エルバート、マイク・ベリーといった人たちとタッグを組んでピックウィックス、アップルジャックス、ライオット・スクアッド、ストーリーテラーズ、バーバラ・ルイス、トニー&タンディなど英国系ポップ・アクト中心に数々の楽曲を提供してきた人で。当時は“ミスター・ティン・パン・アリー”などと呼ばれたりもしていたらしい。自ら結成したバンド、クォーテイションズやボブキャッツのメンバーとして、あるいはセッション・ミュージシャンとして、プロデューサーとして、多彩な形で音楽シーンに関わってきた。

1970年代に入ると、日本人の奥さまと渡米し、メンフィスやナッシュヴィル、ロサンゼルスを転々としつつマイペースで音楽活動。そんな時期に制作された1枚が本作だ。基本的には全編ほんわかのんびりしたMOR(ミドル・オヴ・ザ・ロード)アルバムなのだけれど、A面1曲目に入っていたアルバム・タイトル・チューンだけがちょこっとソウル風味漂うアダルト・コンテンポラリー系の楽曲だったこともあり、そっち方面のリスナーによって後年掘り起こされ、静かに、しかし高く再評価されるようになった、と。

というわけで、ブルー・アイド・ソウル/ホワイト・ソウルの傑作みたいに言われることも多いけれど、そのわりに、実はファンキーさとかブルージーさとかはかなり希薄なので、どっちかというと、前述の形容を繰り返すならば、ほんわかのんびりしたポップ・ソング好き向けの仕上がり。そう思って接すれば完璧な1枚です。基本ソングライターの人なので、当然、曲作りは周到だし、ポピュラー音楽の黄金律満載のコード進行とかも魅力的だし、アレンジのセンスもけっして斬新ではないものの的確だし。

ヴォーカルは、まあ、へなちょこ系ながら、そのぶん暑苦しくないので結果オーライ。これからの季節のBGMには最適かと…。

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