シェパード・イン・ア・シープスキン・ヴェスト/ビル・キャラハン
スモッグ名義で初アルバムをリリースしたのが1990年。ローファイなエクスペリメンタル風味が個人的にはちょっと苦手だったりもしたのだけれど、ジム・オルーク、ジョン・マッケンタイア、ジェフ・パーカー、ジョアンナ・ニューサムらともつながりながら徐々に独特の音世界を確立して。以降、ビル・キャラハン名義を名乗るようになって、もう10年以上。
今では、独特の低い声質や、穏やかに爪弾かれるナイロン弦ギターの音色、憂いに満ちたメロディ、そして日常から切り取られて歌詞に描かれる風景などがレナード・コーエンを想起させたりするシンガー・ソングライターという感じ。USインディ・フォーク〜アメリカーナ・シーンでけっして見逃せない存在になった。
今回もそんな手触りの新作です。まだ歌詞の世界をちゃんと味わいきれてはいないのだけれど、ひとりでいることで感じる孤独ではなく、周囲に他者がいるにもかかわらず、あるいは他者とともにいるからこそ否応なく感じざるを得ない孤独みたいなものがアルバム全体を貫いている感じ。カーター・ファミリーのカヴァーとかも含めて、かなり深い世界観というか。
“夢”とか“愛”とか、そういう語が歌われるときも、その歌声からはむしろそれらの裏側に常に張り付いている脆さ、儚さのようなものがじんわり伝わってきて。一筋縄にはいかない魅力が漂うアルバム。梅雨空に似合うかも。