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Disc Review

Psurroundabout Ride / XTC as The Dukes of Stratosphear (Ape House)

サラウンダバウト・ライド/ザ・デュークス・オブ・ストラトスフィア(XTC)

去年の秋ごろから、日本のソニーが独自に“ビートルズの遺伝子”なるコンセプトのもと、ビートルズの影響下にある様々な後続アーティストの音源を出し続けていて。有名どころ無名どころが混在する強力な2枚組コンピが編まれたり、ELOとかハリー・ニルソンとかビータリカとかの過去作が再発されたり。

特にコンピ。笑った。すごかった。有名もの中心のディスク1はともあれ、無名もの満載のディスク2とか、かつて池袋のオンステージ山野に通い詰めてあれこれ買い漁ったパワー・ポップ系アーティストたちの名前がずらり並んでいて、胸が高鳴った。年末にはザ・ナインズのベストも出たし、もうすぐマイク・ヴァイオラのベストも出るし。

その流れに乗っかったレコード・コレクターズ誌の企画もあった。いくつかアルバム紹介を手伝わせていただいた。と、そんな日々、なんとなく気分を盛り上げるためにBGMとしていちばんよく聞いていたのがXTCだった。特に彼らのサイケデリック・サイド・プロジェクト、デュークス・オブ・ストラトスフィアの音。アガった。

というのも、ちょうど彼らの音を改めて集大成した拡張版CD+ブルーレイのセットが去年の10月に出たところだったから。本ブログではなぜか取り上げなかったのだけれど、聞いているうちにやっぱりこの人たちすごいなと改めて思い知って。年も明けたことだし、遅まきながら紹介しておこうかな、と。そんな感じで、今日、ピックアップすることにしました。

2013年から始まっているXTCの“ザ・サラウンド・サウンド・シリーズ”の最新作。CDとブルーレイに、スティーヴン・ウィルソンによる新ステレオ・リミックスと5.1サラウンド・ミックス、インストゥルメンタル・ミックス、デモ音源、そしてオリジナル・ステレオ・ミックスを詰め込んだ全部入りシリーズだけれど。

2013年にまず『ノンサッチ』(オリジナル盤のリリースは1992年)がこの形式で再発されて、以降、2014年に『ドラムズ・アンド・ワイアーズ』(1972年)、2015年に『オレンジ・アンド・レモンズ』(1989年)、2016年に『スカイラーキング』(1986年)、2017年に『ブラック・シー』(1980年)と続いて。さて、その後、何が来るかと思っていたら、これ来ました。おー、こっち来たか、と意表を突かれつつも、まじ、うれしかった。

バンド名を隠して、メンバー全員が別名を名乗って、自分たちが大いに影響されたルーツ・ミュージックへの偏愛をマニアックに表明する…的な、そういう変名プロジェクトのある種の究極というか、理想像というか、ひな形というか、代表的存在でもあるデュークス・オブ・ストラトスフィア。

まず1985年のエイプリル・フールの日にミニ・アルバム『25オクロック』を出して、いわゆる“ナゲッツ”系60年代サイケデリック・ロックへの思いをぶちまけて。その後、1987年に、より間口をポップに広げたフル・アルバム『ソニック・サンスポット(Psonic Psunspot)』をリリース。両者を合体させた全部入りのコンピ『チップス・フロム・ザ・チョコレート・ファイアボール』も出て。よく聞いたものです。

今回は、その2作で既出の全16曲をスティーヴン・ウィルソンがリミックスしたものに、さらに3曲のボーナスも追加してCDに収録。で、ブルーレイのほうには、前述の通り、新ステレオ・リミックス、5.1サラウンド・ミックス、インストゥルメンタル・ミックス、デモ・ヴァージョン、オリジナル・ステレオ・ミックスを87トラック、すべてハイレゾで詰め込んでいる。

これまでにも2作別々にボーナス入りで再発されたり、CD+アナログ+おまけで構成されたコンプリート・ボックスセットが出たり、いろいろしてきたけれど、その辺で初出となったデモとかボーナス曲とかシングル曲とかも、もちろんこちらにも全部まとまっていて。そこにさらに新規ミックスやサラウンドを追加した新決定版という感じ。以前のコンプリート・ボックスも今や超高値になっているようだし。ありがたい再発かも。

往年のビートルズ、バーズ、ホリーズ、エレクトリック・プルーンズ、ブルー・チアー、カウント・ファイヴ、ヤードバーズ、ムーヴ、ピンク・フロイドなどに触発されためくるめくサイケ・ポップ・エレメンツが交錯する世界観がリニューアルされて甦っているのだから、これは楽しい。1967〜69年ごろのビーチ・ボーイズへのオマージュ「ペイル・アンド・プレシャス」が、個人的には今なお最高のお気に入り曲です。それは昔と変わらず。

曲によってはエコーのかかり具合とか、音処理がずいぶんと今ふうに、ゴージャスというか、上品になっていて、60年代サイケのチープないかがわしさのようなものがむしろ後退した感もなくはない。けど、その辺は受け手それぞれか。サラウンド・ミックスは未体験ながら、ステレオ・リミックスでもそれまで聞こえていなかった音とかが随所に浮かび上がっていたりして。基本、オリジナル・ヴァージョンへのこだわりが強いぼくですら、それなりに楽しめる仕上がりではありました。

とはいえ、ブルーレイのほうに入っているオリジナル・ミックスのほうがやっぱりいいんだよなぁ。そうだ、それもあってリリース当初、本ブログで取り上げなかったんだった。最後になって思い出した…(笑)。

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