Disc Review

Tuscaloosa / Neil Young & Stray Gators (Reprise/Warner Bros.)

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NYTuscaloosa

タスカルーサ/ニール・ヤング&ストレイ・ゲイターズ

“アーカイヴズ・パフォーマンス・シリーズ Vol.4”と銘打たれてリリースされたニール・ヤングの新作は、73年2月5日、アラバマ大学で行なわれたコンサートからの未発表ライヴ音源11曲を収めた1枚。72年の傑作アルバム『ハーヴェスト』の成功を受け、アルバムを全面的にサポートしたストレイ・ゲイターズを引き連れ全米を回ったコンサート・ツアーの記録だ。

このツアーの模様は73年10月、アルバム『タイム・フェイズ・アウェイ(時は消え去りて)』にも記録されて世に出ている。が、ご存じの通り『タイム・フェイズ・アウェイ』にはツアーで披露されたおなじみの既発曲はいっさい収められず、全収録曲がその時点で未発表だったものばかり。かなり異例のライヴ盤だった。ライヴ盤とはいえ新作として受け止めろ、というニール・ヤングらしい姿勢を感じさせる1枚ではあったが、ファンの間でも賛否が渦巻いた。しかも、そのツアー自体なにかと揉め事が多く、ニール・ヤング自身あまりいい印象がないようで、ずいぶんと長いことなかったことにされていたというか(笑)、廃盤になったっきり再発されずじまい。

ようやく復刻が実現したのは、2014年のレコード・ストア・デイの際。『オフィシャル・リリース・シリーズ・ディスクス5〜8』というアナログLPボックスに収められたときが最初だった。オリジナル・リリースから40年以上を経て、ようやくの再発だ。が、そのときはあくまでもアナログ盤のみでの復刻。CD化となると、そのあと2017年にそのアナログ箱のCDヴァージョンが出るまでえんえんおあずけのままだった。今なおフィジカルCD単体でのオフィシャル発売はなし。まあ、ハイレゾとかストリーミングは単体で配信されているので気軽に聞くことはできるようになったものの、なんとも曰く付きの1枚だったわけだ。

そのリベンジということか、『タイム・フェイズ・アウェイ』の続編(というか、実際はこっちが正編っぽいのだけど)のような形で同ツアーの模様を別角度から再検証してみせるのが今回出た『タスカルーサ』だ。

繰り返しになるけれど、とにかくこのツアー、いろいろと揉め事が多かったようで、ニール・ヤングもずっと苛立っていたらしい。直前には盟友ダニー・ウィットンの急逝もあった。酒に溺れ、体調も思わしくなかった。愛器レスポール・オールド・ブラックのピックアップがいかれてしまったため、代わりにフライングVを使ってみたらチューニングがなかなか合わず最悪だった。ストレイ・ゲイターズにはナッシュヴィルやロサンゼルスの腕ききセッションマンも含まれており、金銭面や労働条件面で折り合いを付けるのが難しかった。そのせいで、サウンドチェックのときからヤングさんはイライラしっぱなし。何かと演奏を中断してメンバーにあれこれ注文をつけたり、突然中止にしてしまったり…。

そんなこんなで、ツアーの途上、ドラムのケニー・バットリーは嫌気が差してバンドから離脱。急遽ジョン・バーバタにバトンタッチしている。『タイム・フェイズ・アウェイ』はバーバタ加入後、第2期ゲイターズの演奏の記録だった。それに対し、こちら、『タスカルーサ』はまだケニー・バットリー在籍期。おかげで『ハーヴェスト』と同じ、ベン・キース、ジャック・ニッチ(今回のアルバムのメンバー紹介でもヤングさんが“ニッチェ”ではなくはっきりと“ニッチ”って発音しているので、これからぼくはなるべくこう表記しますw)、ティム・ドラモンド、ケニー・バットリーというオリジナル・ゲイターズのライヴ演奏が楽しめる。

選曲的にも、すべて未発表曲だった『タイム・フェイズ…』とは違い、まずギターでファースト・ソロから「ヒア・ウィー・アー」を、次にピアノで「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」をそれぞれ弾き語ったあと、バンドを迎えて『ハーヴェスト』から5曲(「週末に」「ハーヴェスト」「オールド・マン」「孤独の旅路」「アラバマ」)、このツアー直後に録音される『今宵その夜』から2曲(「ルックアウト・ジョー」「ニュー・ママ」)、および『タイム・フェイズ・アウェイ』で初お披露目された作品が2曲(「タイム・フェイズ・アウェイ」「ドント・ビー・ディナイド」)という内訳。

全部新曲という『タイム・フェイズ・アウェイ』もニール・ヤングっぽくはあったけれど、最初からこっちみたいな選曲していれば『タイム・フェイズ・アウェイ』の評価ももっと高かったような…(笑)。「週末に」のライヴ・ヴァージョンとか、もう最高っす。場所柄と歌詞の内容を鑑みると、「アラバマ」ってのはかなりやばい、攻めた選曲ですが。それを敢然とかましちゃうところがまたニール・ヤングってことなのかも。

とにかく演奏も歌唱もけっこういい。ヤングさんが納得いっていなかったのはどうやらあくまで諸々の周辺事情に対してであって、演奏そのものにではなかったんじゃないかなとぼくは勝手に感じたりもした。そういう意味でも興味深い発掘だった。以前、「ドント・ビー・ディナイド」が先行公開されたときのブログでも書いたけど、アナログ盤も出るそうで、そちらは2枚組。サイド1〜3に曲、サイド4がアートワークになっているのだとか。欲しい…。

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