Disc Review

Seeing Other People / Foxygen (Jagjaguwar)

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シーイング・アザー・ピープル/フォクシジェン

2017年1月に出た前作『ハング』からブランク2年ちょい。といっても、『ハング』もその前の『…アンド・スター・パワー』から2年半ぶりのリリースだったから、まあ、最近のこの人たちはこんなものか。メンバーのひとり、ジョナサン・ラドーが「これはブレイクアップ(別離)のアルバムだ」と発言したとかで、もろもろ憶測を呼んでいる新作だ。

実際のところ、特に解散アルバムというわけではなさそうで、2012年以来、所属してきたジャグジャグワー・レコードからのリリースはこれが最後…ということらしい。なんでも、アルバム・リリースに伴う苛酷なプロモーション・ツアーをしたくないフォクシジェン側と、ツアーを熱望するレーベル側とで意見が食い違い、結果、袂を分かつことになったとかなんとか。

フォクシジェンの場合、基本的には従来のバンドという概念ではとらえきれないレコーディング・プロジェクト寄りのユニットだけに、実際、ツアーはけっこうな負担だったらしい。やるとなったら本格的にやりたいので予算もスケジュールも大変、みたいな。ラドーが様々な他アーティストのプロデュース・ワークを手がけていることもフォクシジェンの動きをどうしても鈍くしてしまったようだ。

もうひとりのメンバー、サム・フランスのほうも、「年齢的にも30代が近くなって、あえてアダルト・コンテンポラリーな1枚を作った」みたいなことを言っていて。ドラッグとの決別、パーティの終わり、20代からの卒業、若さの喪失…。そうした諸事情が絡まり合って、ある種世代感覚の代弁者として彼らに切実に期待をかけていたのであろう熱心なファンたちの間では、本作、なんとなく複雑に賛否が別れているようにも見える。

確かに、連綿と続くポップ・ミュージックの伝統的フォーマットのようなものにこれまで以上にまっすぐアプローチした感あり。これまでは60年代から70年代という、彼らにとっては思いきりバーチャルな時代への眼差しを下敷きに奔放な21世紀的感性を全開にしている感じだったけれど、今回は80年代くらいまで興味の範囲を広げつつ、しかし既成のフォーマットみたいなものに対してさほどの狼藉は働いていないような…。とはいえ、89年生まれのフランスと90年生まれのラドーなわけで。結局は今回もまた、実体験のない時代のサウンドへのイマジネイティヴかつヴァーチャルな冒険旅行といった感触。そのあたりは変わらない。

曲によっては、なんとジム・ケルトナーをゲスト・ドラマーに迎え堂々たるグルーヴを提供してもらっているのが新味か。MTV初期によく耳にしたようなシンセ・ポップっぽいダンス・サウンドもあるし、マイアミ・ソウルの要素を取り込んだユーロ・ビート調もあるし、ローズ・ピアノの響きが心地よいメロウなミディアム・チューンもあるし、切ないバラードもあるし。そういえば、以前、ジョナサン・ラドーはブルース・スプリングスティーンのアルバム『ボーン・トゥ・ラン』をまるごとカヴァーしたりしていたけれど。今回は『闇に吠える街』や『ザ・リヴァー』のころのスプリングスティーンをまっすぐ想起させる曲も収められていたりして。笑った。楽しい。

それら多彩な音楽要素をある時期のスライ・ストーンを思わせるくぐもった感触の音像で包み込んだり、ひねくれたアナログ・シンセっぽいノイズと同居させたり。このあたり、やはり後追い世代ならではの自由な感覚だなと思う。還暦も過ぎて、新しいだの古いだの、そんな曖昧な価値観をたかだか人間ごときの短い一生のうちでちまちま論議したところで始まらないなぁ…と、すでに否応なく思い知らされてしまっている旧世代リスナーとしてはですね(笑)、ざっくり言って、今回もこれまでの諸作同様、また楽しい仕上がりだった、と。そういうことでした。

ちなみに今回のジャケって、ウォーカー・ブラザーズ、意識してる?

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