イット・レインズ・ラヴ/リー・フィールズ&ジ・エクスプレッションズ
ジェームス・ブラウンの伝記映画でヴォーカルの吹き替えをやったことでもおなじみ、60年代から“リトルJB”などと呼ばれたりもしながら活躍してきたベテラン・ソウルマンの新作だ。
といっても、この人の往年の作品群がきっちり再評価されて本格的にシーンの注目を集めだしたのは90年代末〜2000年代アタマ。そういう意味ではこのブログでもよく紹介している、いわゆるレトロ・ソウル/ヴィンテージ・ソウル系アーティストたちの流れのもとでひとくくりに語ってもおかしくない個性ではあるのだろうけど。
でも、なにせ本物だから。けっして派手に売れたこととかはなかったにせよ、若い世代のヴィンテージ・ソウル・アーティストたちが敬い憧れるホンモノ世代のひとり。そういうベテランがこうしてばりばり元気に充実した新作アルバムをリリースし続けてくれているのだから、すごい。ありがたすぎて涙が出る。
“再発見”後の5作目。前作が出たのは確か初来日を果たした2016年暮れのことだったから、2年半ぶりくらいか。今回もトゥルース&ソウル〜ビック・クラウン・レーベル絡みの最重要人物、リオン・マイケルズ率いるジ・エクスプレッションズががっちりサポート。JBはもちろん、カーティス・メイフィールド、アル・グリーン、ビル・ウィザース、ドラマティックス、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケットら無数の偉人たちの味を真っ向から継承しつつ、どす黒さと無骨な甘さとを併せ持つ屈強な歌声を炸裂させている。
ここに横溢しているのは、古き良きソウル音楽の黄金律。音作りもけっこう徹底していて、70年代ソウル・コンピを聞いているような錯覚に陥る瞬間も。が、それでも全体的にはあくまで“今”の時代に呼吸している感触に貫かれていて。そのあたりがマイケルズのいい仕事ぶりということになるのか。リー・フィールズ自身、ブルーノ・マーズとかエド・シーランとか、近年のポップ・アーティストたちの動向に大いに興味を抱いているようで、そうした柔軟さもいい方向に作用しているのだろう。ごきげんな68歳です。
やっぱ、ビッグ・クラウン系は油断ならないな…。