ウィーザー(ティール・アルバム)/ウィーザー
「メリクリ」から、もう10年かぁ…。
日本盤へのボーナス・トラックのためだったとはいえ、ウィーザーがいきなり「メリクリ」をカヴァーしたときはぶっとんだ。仕上がりも素敵だったし。リヴァースのたどたどしい日本語がまた切なくて泣けたし。今さらではあったけれど、この人たち、妙な先入観にとらわれない、豊かな幅をたたえた、いい音楽センスしてるんだな…と改めて思い知ったものだ。
今回、藪から棒にリリースされた本作もそんな感じ。去年、ファンの要望で実現したというTOTO「アフリカ」のカヴァー・シングルが予想外のヒットを記録したのがきっかけとなったのか、「アフリカ」も含む全10曲のカヴァー・アルバム『Weezer (Teal Album)』をいきなり届けてくれた。3月1日にリリース予定の新作『Weezer (Black Album)』への景気づけという感じ? うれしいサプライズだ。
毎回、ジャケットの色をアルバム・タイトルに付けてきたウィーザーだが、今回の“ティール”は緑青色という、なんとも微妙な中間色。なんか、わかる。取り上げている楽曲はTOTOのほかティアーズ・フォー・フィアーズ、ユーリズミックス、a-ha、マイケル・ジャクソンといった80年代ものが中心。そういや、ジャケットのメンバーの服装も80年代半ばの『マイアミ・ヴァイス』っぽい。で、残りがタートルズ、ベン・E・キングのような60年代もの、ブラック・サバス、ELOのような70年代もの、そして、これがいちばん驚いたTLCのような90年代ものという構成。
カヴァー・アルバムというのは、自らのルーツの真摯な表明だったり、現在進行形の好みの提示だったり、取り合わせの意外性がもたらす異化効果を楽しむものだったり、いろいろな形があるわけだけれど。そのすべての要素を網羅した選曲ではある。先行した「アフリカ」同様、独自のアレンジにこだわることなく、基本オリジナル・ヴァージョンに忠実な仕上がりで。その辺の真意は今ひとつ判然としない。なんか、パーティで重宝がられる普通のトップ40バンド的な役柄をあえて演じようとしているのかな。わからないけど。
ただ、じゃ、思いきりフル・コピーにこだわっているのかといえば、これがそうでもない局面も多くて。どういう基準でそうしたアレンジにしたのか、気になって気になって、何度も繰り返し聞いてしまうという…。完全にウィーザーの術中にハマってる感も(笑)。まあ、いかにも中間色って感じの1枚か。