Disc Review

James Farm / Joshua Redman, Aaron Parks, Matt Penman, Eric Harland (Nonesuch)

ジェイムス・ファーム/ジョシュア・レッドマン、アーロン・パークス、マット・ペンマン、エリック・ハーランド

八木誠さんが亡くなられて…。

なんか、まじショックだ。同業の大先輩として、たくさんアドヴァイスいただいり、あれこれ怒られたり、時々ほめていただいたり。いろいろ思い出すことは多いのだけれど。ぼくにとって八木さんはやっぱり“ヤギちゃん”で。中学生のころ、ぼくが書いたリクエスト・カードをはじめて採用してくれた憧れのディスクジョッキーのまま。『パック・イン・ミュージック』も『ホリデー・イン・ポップス』も大好きだった。TBSトップ40は毎回ランクをノートにつけていたっけ。カメさんのポップス・ベスト10と、ヤギちゃんのTBSトップ40はぼくの中でビルボードと同じくらい重要な存在だった。

若山弦蔵さんやニッキー山室さん、そしてディレクターの平川清國さんたちに囲まれて、ものすごくワンパクに、躍動的に、ラジオを通して洋楽ポップスのかっこよさを伝えてくれたヤギちゃんは、間違いなくぼくにとって最大のロックンロール・ヒーローのひとり。イントロにかぶせての曲紹介とか、日本ではヤギちゃんが草分けだった気もするのだけれど…。

ちなみにヤギちゃんがかけてくれたぼくの生涯初のリクエスト曲はインプレッションズの「ピープル・ゲット・レディ」。1967年だったか68年だったか、ヴァニラ・ファッジがアルバムでこの曲をカヴァーしていたもんで、そのオリジナル・ヴァージョンを聞いてみたくてリクエストしたら、ヤギちゃんは一発で見事に応えてくれたのでした。ポップ音楽に対するぼくの、んー、何というか、マニアックなというか、考古学的なというか、そういうアプローチって、このリクエスト葉書を書いた瞬間に始まったような気もする。いろいろな扉を開いてくれた人でした。本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈りします。

ぼくが多感だったころにリアルタイムでいきいき体験した大切な文化が、こうしてまたひとつ幕を閉じてしまった気がして。ここ数日はポップス系を聞く気が今いち起こらず。なもんで、本日のピック・アルバムもジャズ畑からにしときます。ジョシュア・レッドマン、アーロン・パークス、マット・ペンマン、エリック・ハーランドという、コンテンポラリー・ジャズ・シーンを牽引する4人が組んだ新バンド(それぞれの頭文字をとって、J、A、M、Eってことらしい)のファーストだ。輸入盤は4月リリース。今月ボーナス曲追加で国内盤が出たみたいなので、今さらながら取り上げておきます。

全曲メンバーによるオリジナル。伝統的なダンモ(笑)のカルテット編成を採りつつも、ロック、R&B、クラシックなど、ジャズにとどまらない奔放な音楽性が交錯するところがポイントかな。適度なリラックス感と、適度な緊張感と、適度な既視感と、適度なスリルと。名手ぞろいなもんで、まあ、そんな感じの仕上がりなんだけど。この“適度な”ってところが好き嫌いの分かれ目かも。ぼくは楽しめました。こういう音像自体、今の時代には貴重だもの。

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