ヤケティ・ヤック/ザ・リーバー=ストーラー・ビッグ・バンド
前回のエントリーで触れさせてもらったぼくの新刊なんですが。『ロック・ギタリスト伝説』ってタイトルで。あー、やっぱ健太さん、“伝説”好きですねー…と何度か言われましたよ。ぼくが初めて書いた本のタイトルが『はっぴいえんど伝説』だったからなんだけど。いやいや、偶然ですから(笑)。今回のタイトルはアスキー新書の方が付けてくれました。ぼくはノー・タッチです。
まあ、ぼくが本を書く際に取り上げる話題が古いものばかりなので、伝説って単語が使いやすいのかも。古い人間なんです。すみません。
というわけで、今回のピックアップ・アルバムですが。やっぱり古いとこ、いきます。ビッグ・バンド・ジャズというか。いや、R&Bというか。ポップ・インストというか。以前、ここでも書いたレイ・チャールズのジャズ・アルバムにも通じるような1枚。1960年にアトランティックからリリースされたザ・リーバー=ストーラー・ビッグ・バンド唯一のアルバムです。
つーか、これはもちろんパーマネントな楽団ではなくて。アーティスト名からもわかる通り、史上初のブルー・アイド・ソウル・ブラザーズとも呼ばれる偉大な白人ソングライター/プロデューサー・ユニット、ジェリー・リーバー&マイク・ストーラーの作品を、臨時招集されたジャズメンによって構成されたビッグ・バンドでジャズ風味にアレンジしつつ聞かせた盤だ。自らも数々のレコーディングに参加しているリーバー&ストーラーながら、ここでは演奏には参加せず。スーパーヴァイザーとしてのみクレジットされている。
集ったミュージシャン陣は、フランク・フォスター、ソニー・ペイン、アル・グレイ、サド・ジョーンズ、レッド・ミッチェル、ハンク・ジョーンズ、エリス・ラーキン、ケニー・バレル、アーニー・ロイヤル、ベニー・パウエルなど。カウント・ベイシー・オーケストラ系の人脈を中心に、名手が勢揃いだ。エンジニアはフィル・ラモーン。オリジナル・ライナーノーツはナット・ヘントフだ。
こういう布陣で、「ヤケティ・ヤック」「ポイズン・アイヴィ」「スモーキー・ジョーズ・カフェ」「チャーリー・ブラウン」といったコースターズへの提供曲や、「ラヴィング・ユー」「ジェイルハウス・ロック」「ドント」「ハウンド・ドッグ」などエルヴィス・プレスリーでおなじみの楽曲、「ブラック・デニム・トラウザーズ・アンド・モーターサイクル・ブーツ」「バズーム」などチアーズへの提供曲、そしてウィルバート・ハリスンの、というよりビートルズも歌っているR&Bスタンダードとしておなじみ「カンサス・シティ」の計11曲を演奏。オリジナル・ヴォーカル・ヴァージョンのR&B色やノヴェルティ色がぐっと抑えめになって、楽曲の底辺に流れるジャジーな魅力をぐっと強調して聞かせてくれる。
リーバー&ストーラーの楽曲群の構造解明にも役立ちそうな奇盤・快盤です。