ジーン・オン・ジーン/ジーン・オン・ジーン(モリー・シュニック)
元アウト・ハッドのチェロ奏者、モリー・シュニックのソロ・アルバム。“Jean On Jean”という名義でのリリースだ。すでに先月、ダウンロード配信のみでリリースされていたけれど、今月になって盤も出ました。ダブ、パンク、ファンク、何でも来いの勢いで呑み込みながらダンサブルに炸裂していたアウト・ハッドのサウンドとは一転、フォーキーで、室内楽的で、穏やかで、繊細で、内省的で、でも歌詞の世界にはおもっきしクールな毒をはらんでいる、みたいな。そんな1枚だ。
一部、元スーパーシステムのギタリスト、ラファエル・コーエンも協力しているけれど、基本的にはアウト・ハッドが解散してからの3年、じっくり時間をかけ、ほとんどの楽器を自分で奏でながら作り上げたものだとか。イノセント感全開の歌声もいい。モー・タッカーっぽい感触もあったりして…。
キュートなコーラス・ハーモニーを伴った曲があったり、オールディーズふうのコード展開が聞かれたり、ガール・グループふうのアプローチがあったり、今どきのシンガー・ソングライター系の楽曲があったり、アヴァンギャルドな展開が突如飛び出したり、微妙にではあるけれど、楽曲ごとの表情は様々。が、全体のトーンはアルバム・ジャケット通り、ちょいダウナーめ。いかにもインディー・ポップ系だなぁ、という、あまりやみくもにおすすめできない盤ではありますが。こういうの、トシとった今でも、ときおり無性に聞きたくなる。昔ほどじゃないけど。そういう人、少なくないんじゃないかな。