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Disc Review

Hollywood Maverick: The Gary S. Paxton Story / Various Artists (Ace)

ハリウッド・マヴェリック:ザ・ゲイリー・S・パクストン・ストーリー

さあ。間もなくCRT&レココレ、ストーンズまつりです。今年もテラ坊編集長がミック・ジャガーにつかみかかる恐怖の映像が楽しめるのでしょうか。楽しみだなぁ。ソフトバンク・ホークスがこのところ絶不調なので、ホークス・クレイジーのテラ坊、微妙な気分だろうけど。まつりで存分に発散してもらいましょう。

で、今回のピック・アルバムですが。

ロックンロール史上、もっとも偉大かつもっともストレンジな男……と言われて思い出すのは、たとえばフィル・スペクターとか、ブライアン・ウィルソンとか、ロイ・ウッドとか。でも、この人も忘れちゃいけません。ゲイリー・サンフォード・パクストン。60年代の西海岸シーンでヒットを量産したプロデューサー/ソングライターで。おなじみのものとしては、ハリウッド・アーガイルズの「アリー・ウープ」とか、ボビー“ボリス”ピケットの「モンスター・マッシュ」あたりの傑作ノヴェルティ・ヒットだろうけど。そのテだけじゃなく、ニューオリンズR&B、ドゥー・ワップ、サーフィン/ホットロッド、ガール・グループ、フォーク・ロック、スパイもの、カントリー、ゴスペルなど、実に雑多なレコードを作り捨てて(笑)いた。いや、違うな。ノヴェルティもの以外の曲も、全部どこかノヴェルティっぽい、なんとも乾いたユーモアがこめられているのがこの人の持ち味で。

その辺の楽曲を英ACEが見事にコンパイルしてくれたのが本盤。同時代の、たとえばスペクターとか、ゲイリー・アッシャーとか、テリー・メルチャーとかが、裏方ながら個人的にもそれなりに名を挙げているのに対し、ゲイリー・パクストンはあくまでも裏方というか。あまりにもとぼけたヒットが多いもんで、まともに取り上げられる機会も少ないわけだが。この盤で彼の持ち味をまとめて堪能してもらいたいものです。世間の評価も変わるかな。前述ノヴェルティ・ヒット群はもちろん、パクストンが業界での地位を確立したスキップ&フリップのヒットから、フォー・フレッシュメンの珍しいハーモニー・ポップ系作品、バーズやドゥービー・ブラザーズのカヴァーでおなじみ、アーサー・レイノルズ作「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」の作者ヴァージョンなどまで、1958~1966年までのごきげんな作品集です。

こういう味って、特に日本あたりだと不当に低く、軽く見られがちなところがあるのだけれど。ここには絶対に見逃してはいけないロックンロールの大きな魅力が詰め込まれている。こういうのばっかり集めて、CRTやりたいなぁ。「オールディーズまつり~ノヴェルティ・ソング・ナイト」とか。お客さん、来ないかなぁ……。

さてさて。今回もいろいろ他に気になった新譜があるので、軽くリストアップしておきますです。

American Myth / Jackie Greene (Verve Forecast)

数年前からインディーズで活動していたシンガー・ソングライター。このほどヴァーヴ・フォアキャストと契約して、本格デビュー盤をリリースした。グレッグ・レイズ、スティーヴ・バーリン、ピーター・トーマスといった連中にバックアップされつつ、ブルージーなルーツ・ロックから、淡々とした生ギターの弾き語り、ブルー・アイド・ソウルっぽいポップ・チューンまで、けっこうツボにはまったオリジナル曲を聞かせてくれる。内省的な歌声もいい。

Subtitulo / Josh Rouse (Nettwerk/Bedroom Classics)

これが7枚目。去年の『ナッシュヴィル』も素晴らしい仕上がりだったけれど、今回もよいです。プロデュースはまたまたブラッド・ジョーンズ。前作には、私生活での離婚と、それにともなう本拠地ナッシュヴィルへの決別が託されていたわけだが、今回は新たな本拠、スペインでの録音だ。環境の変化が音にいい影響を与えたか、実にリラックスした仕上がり。シエスタにぴったり、みたいな(笑)。メロディばっちり。ちょっとひねた歌詞もよし。ボサノヴァっぽいアプローチから、スウィート・ソウルっぽいものまで、アレンジも的確。それでいて、すべてがひたすら内省的ってのが、またいいっす。

People Gonna Talk / James Hunter (GO Records/Rounder)

寡作なUKブルー・アイド・ソウル系アーティスト。これがまだ3作目かな。スカ、R&B、ジャズ、ブルースなどを独自の、なんというか、こう、スムースで、クールな持ち味で料理。ホーン・セクションのアレンジがばっちり。熱くならないのにファンキー。けっして若くない人だけど、いやいや、若くないからこそできる音楽です。佳き頃の英国スカ・バンドっぽいチンピラ感覚も感じられて、かっちょえー。

The Animal Years / Josh Ritter (V2)

03年の傑作セカンド『ハロー・スターリング』以来、V2レコードに移籍しての新作だ。前作まで特徴的だった歌詞面での歪んだユーモアみたいな味はちょっと後退。レナード・コーエンとジリアン・ウェルチが好きだという、そんな志向性がよりストレートに刻まれた1枚か。9分超の「ザ・ブルー・フレイム」って曲もダレさせない“意志”のようなものが感じられて、成長ぶりを印象づける。歌声の線はぐっと細いものの、ときどきスプリングスティーンのような、あるいはジャクソン・ブラウンのような、はたまたティム・ハーディンのような、いやいやニール・ヤングも好きそう、あれ、これはウォーレン・ジヴォンっぽいぞ……みたいなメロディ・センスに惹かれる。

Born Again in the USA / Loose Fur (Drag City)

ジェフ・トウィーディ、グレン・コッチ、ジム・オルークによるプロジェクト、まさかの第2弾アルバムが3年ぶりに出た。前作のような、穏やかで、アコースティカルな手触りを引き継ぐ楽曲もあるが、一転、けっこうルーズなルーツ・ロックっぽいアプローチが聞かれる曲もあって面白い。音響派、プログレ、ルーツ・ロック、バカラック、フォークなど、メンバーそれぞれの持ち味を脈絡なく一気にかき混ぜたような音世界が楽しい。ウィルコの『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』やジム・オルークの『インシグニフィカンス』が好きな人は、今回もスルーできません。 

Story Like A Scar / The New Amsterdams (Vagrant)

ゲット・アップ・キッズのマットのサイド・プロジェクトとしてスタートしたニュー・アムステルダムズだけれど。去年、キッズが活動停止。こちらがメインになってしまった状態での新作だ。2年ぶりか3年ぶりかの4枚目。キッズ末期に通じる、センチメンタルな感触満載。マットのソングライターとしての資質を再確認できる仕上がりです。暗いクラブの片隅で歌われているような、なんともスモーキーなムードも魅力的。

Over And Over / Erin Bode (Max Jazz)

ちょっと前、今年の1月末に出た盤。ディランやビートルズやガーシュインや、多彩なカヴァー曲を収めた04年のデビュー盤に続くセカンド、だと思う。アダム・マネスのピアノとギターを中心に据えた、アコースティカルかつジャジーな音作りが聞かれることもあって、ノラ・ジョーンズと比べられることが多い人だけど。マネスとのがっちりとしたタッグぶりから、エヴリシング・バット・ザ・ガールを引き合いに出すレビューも少なくない。今回、カヴァーはポール・サイモンの「グレースランド」とシンプリー・レッドの「ホールディング・バック・ザ・イヤーズ」、そしておなじみ「アローン・トゥゲザー」の3曲のみ。残りはほぼマネスとの共作曲。楽曲そのものの出来にかなり左右はされるものの、いい瞬間にはゆるめのジョニ・ミッチェルみたいな手触りも感じられて。小粒ではあるけれど、好感度高し。ちなみに、名字だけど。ボーディーでいいのか? ボーデー? ボウドじゃないらしい。

Corinne Bailey Rae Corinne Bailey Rae (EMI)

BBCが2006年のホープとして大プッシュしていることで、日本でもすでに話題のUKシンガー。シャーデーとか、ミニー・リパートンとか、ジル・スコットとか、エリカ・バドゥとか、またまたノラ・ジョーンズとか、その辺がやたら引き合いに出されるのもうなずける、アンニュイで、スウィートで、メロウな1枚。EU盤は相変わらずコピーコントロール盤。東芝EMIが輸入販売しているのもこれです。UK盤が通常CD。ご注意を。

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