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Disc Review

Pay The Devil / Van Morrison (Lost Highway)

ペイ・ザ・デヴィル/ヴァン・モリソン

球春到来。どうなることやら……のWBCもあるし、オープン戦も徐々に北上してきて、間もなく東京ドームにやってくるし。野球とロックンロールの日々がまた始まりますよ。てことで、新年のご挨拶以来(笑)、まじ久々の更新です。

やっぱり原は仁志を追い出す気なのか? 冗談じゃないぜっ。

まあ、それはそれとして。今回のピック・アルバムは、アメリカ音楽への深い敬愛をいつも全開にしつつ、自らのアイリッシュ・ルーツと見事融合させながらワン・アンド・オンリーな歌声を聞かせるヴァン・モリソンの新作。前作『マジック・タイム』から1年も置かずにリリースされた新作は、ジャズ、R&B、ブルース、フォークなどと並んで彼の重要な下地を作っているカントリーにこだわった仕上がりだ。オリジナル曲は3曲。あとはハンク・ウィリアムス3曲、ウェブ・ピアス3曲のほか、ジョージ・ジョーンズ、テックス・リッター、コニー・スミス、エミルー・ハリスらのレパートリーなど、新旧カントリーのカヴァーがずらり。他にも、ブルー・ルー・ベイカーのブルージーな楽曲が入っていたり、チャック・ウィリスのスローR&Bバラードが入っていたり、リトル・ウィリー・ジョンやパーシー・スレッジもカヴァーしたタイプの楽曲が入っていたり。ソウルとカントリーとの深い深い関係にもきっちり目配りした選曲が泣ける。本家よりもぐっと湿りっ気を帯びた表現になるあたりも、さすがベルファスト・カウボーイならでは。レイ・チャールズの『モダン・サウンズ・イン・カントリー&ウェスタン・ミュージック』のヴァン・モリソン版って感じでしょうか。まあ、この人の盤にはずれなしってことで。今作も長く楽しめそうな1枚。ぜひオリジナルとの聞き比べとかしながら、ヴァン・モリソンならではの表現ってのがどういうものなのか、味わってくださいませ。

で、長いこと更新しなかったので、とりあえず、このひと月ほどで買ったCDのうち、今、手元に積んであるお気に入り盤をざっとまとめて紹介することにしました。たくさんいただいた“早よ更新せいっ”メールの中に、けっこうこのページを参考にCDを買っているという方もいらっしゃって。もちろん、これまで何度も繰り返しているように、ここは個人的な趣味として適当にやってるページなので、あまり頼りにしないほうがいいぞと思いつつも、多少なりとも参考になればってことで。

Hammersmith Odeon, London '75 / Bruce Springsteen & The E Street Band (Columbia)

先日紹介した衝撃のボックス・セットにDVDとして収められていた75年、ロンドンでのライヴがCDでも登場。内容のすごさはもう繰り返しませんが、もともとDVDの段階で、当時のマルチをボブ・クリアマウンテンが新たにミックスしていたわけで。音的にもごきげん。映像付きだとなかなか“ながら”リスニングができないだけに、このCD化はうれしいかも。

Bronx in Blue / Dion (Dimensional)

自らの重要なルーツであるブルースを中心に、カントリーなども交えつつのアコースティック・カヴァー盤。ファンにはおなじみ、ベルモンツを従えてのライヴDVDのインタビュー・シーンで披露していた絶妙の生ギター弾き語りを発展させたような仕上がりで。ブルースとカントリーをブロンクスのムードで融合した……と自ら説明するディオン・サウンドの秘密を解き明かしてくれる。

There You Are Again / Livingston Taylor (Chesky)

9年ぶりのスタジオ録音。力の抜けた、実にいい感じの仕上がりだ。兄のジェームス、妹のケイト、兄の前妻カーリー・サイモン、ヴィンス・ギル、スティーヴ・ガッド、リー・スクラー、デイヴィッド・サンボーン、ゲイリー・バートン、テイク・シックスなど多彩な顔ぶれに支えられつつ、どこか懐かしい、ポップで、ジャジーで、時に敬虔な歌世界を届けてくれる。歌い続けてくれていてありがとう、みたいな。まじ、そんな気分にさせてくれる仕上がりです。

The Little Willies / The Little Willies (Milking Bull)

ノラ・ジョーンズはじめ、近年のニューヨーク派ミュージシャン5人が集まったバンド。ボブ・ウィルズ、ハンク・ウィリアムス、エルヴィス・プレスリー、クリス・クリストオファソン、タウンズ・ヴァン・ザント、ウィリー・ネルソン、グラム・パーソンズ、エディ・アーノルド、レイ・プライスなどでおなじみの楽曲に、数曲のオリジナルを交えて、素養の豊かさを思い知らせてくれる。聞く側も素養があればあるほど楽しめる1枚っすね。

Slow New York / Richard Julian (Manhattan)

そのリトル・ウィリーズのメンバーでもあるシンガー・ソングライター、リチャード・ジュリアンの新作。半分をバンド・メイト、ノラ・ジョーンズとリー・アレクサンダーがプロデュース、半分をブラッド・ジョーンズがプロデュース。ブラッド絡みのほうは往年のグリニッチ・ヴィレッジっぽい、初期ディランみたいな仕上がりになっていて面白いのだが、これじゃ一般受けしないってことか、ノラ絡みのほうは、まあ、そういういかにもな音になってます。

With Strings: Live At Town Hall / Eels (Vagrant)

パンクっぽかったり、フォークっぽかったり、テクノっぽかったり。その時々でまったく様相が違うイールズのライヴだが。今回出た名門タウンホールでのライヴ盤は、なんとウィズ・ストリングス。メロディカ、チェレスタ、パンプ・オルガン、ラップ・スティールなど、雰囲気ある楽器と弦楽を組み合わせて、独自の内省的な世界観を見事に表現してみせる。曲数の多いDVDも出ているので、そっちのほうがお得感はあるかも。 

Ghetto Classics / Jaheim (Warner Bros.)

デビューしたときから、この人のクラシックR&Bの伝統を受け継ぐアプローチが大好きで。セカンド・アルバムが出てから音沙汰がなくなっていたので、淋しく思っていたものの。ようやく出ました。3年ぶりか4年ぶりのサード・アルバム。この種の音に対して、最近はネタがどうのこうのって話になりがちだけれど、それを超えたところで淡々と放たれるジャヒームの歌心こそを聞きたい1枚。

A Tribute To Nicolette Larson: Lotta Love Concert / Various Artists (Rhino)

1997年暮れに他界したニコレット・ラーソンだが。翌年行われた追悼コンサートの模様が、8年の歳月を経てついにリリースされた。キャロル・キング、リトル・フィート、ボニー・レイット、CSN(Yはいません)、エミルー・ハリス、リンダ・ロンシュタット、ジョー・ウォルシュ、ジャクソン・ブラウン、ジミー・バフェット、ダン・フォーゲルバーグらが参加。ニコレットゆかりの曲ばかりが披露されるわけではないので、まあ、ニコレットとともに“あの時期”のサザン・カリフォルニア・メロウ・ポップのあたたかさを共有していた顔ぶれによるオールスター・コンサートという感じで楽しみつつ、彼女を悼むというのがよさそうな1枚です。

Timeless / Sergio Mendes (Concord)

映画『ビー・クール』での共演をきっかけに生まれたセルメン&ブラック・アイド・ピーズの新作。スティーヴィー・ワンダーとかも参加しているけれど、基本的には新しめのヒップホップ/R&B系アーティストが勢揃い。ブラック・アイド・ピーズの総指揮のもと、セルメンのボサノバとヒップホップが楽しく融合した1枚だ。新旧グルーヴの幸福な交歓ってとこでしょうかね。 

In My Own Words / Ne-Yo (Def Jam)

けっこう前からマリオ、ヤングズタウン、キャシディあたりにメインストリームR&B系のいい作品を提供していたシェイファー・スミスがニーヨと名乗ってのデビュー盤。つーか、すでに全米1位だから。もうおなじみか。さすが適度にポップないい曲ぞろいです。こっちのほうがネタ探しがしたくなりそうなオケかも。

The Greatest Songs Of The Fifties / Barry Manilow (Arista)

サンタナに若手と共演させ、ロッドにアメリカン・スタンダードを歌わせ、ブライアンにクリスマス・アルバムを作らせ……。アダルト層向けの戦略を次々繰り出しつつ、かなりの成功を収めているクライヴ・デイヴィスが、今度はバリー・マニロウに50年代メロディを歌わせた。ポップ・スタンダードからティーン・アイドルもの、ジャズ、ドゥーワップなど、幅広いというか、有名曲ばっかりというか、そういう広く浅い選曲で今回も見事全米ナンバーワン・アルバムに。すごいね。 

Songlines / The Derek Trucks Band (Columbia)

再結成オールマン・ブラザーズ・バンドはこの人なしには成立し得なかった……という説明はもういらなくなったかな。ソロ・キャリアを歩み出してすでに10年弱。ルーツ・ロック感覚あふれる独自のバンド・サウンドもきっちり完成した感じだ。ごきげんなスライド・ギター・プレイヤーとしてだけでなく、ソングライターとしてもずいぶん成長。これまで時折見られた冗長なジャムも少なくなり、楽曲そのものの魅力がよりタイトに伝わってくる。頼もしい。

Out Of The Ashes / Jessi Colter (Shout! Factory)

20年以上のブランクを経てリリースされたジェシ・コルターの新作。御主人ウェイロン・ジェニングズ他界の悲しみも癒えて、再出発という感じか。ドン・ウォズがプロデュース。ほとんどがコルターの書き下ろし曲だが、中でもトニー・ジョー・ホワイトとかなり以前に共作したという「アウト・オヴ・ザ・レイン」に生前のウェイロンの歌声がフィーチャーされていて、ぐっときた。なかなか聞かせるスワンプ/カントリー系の1枚。ディランのカヴァーなども。

North American Ghost Music / Shannon McNally (Back Porch)

アメリカでは、間もなく来日するサン・ヴォルトと一緒にツアーに出ているというシャノン・マクナリー。もともと第二のアラニス・モリセットとして売り出されそうになったところを拒絶して、よりルーツィでアコースティックなロックを目指した女性シンガー・ソングライターだが。去年、けっこう評判を呼んだ『ジェロニモ』から半年強でリリースされた新作。参加ミュージシャンの顔ぶれはリリースを重ねるごとに地味になってきてはいるけれど、そのぶんバンドっぽさも増して。カントリー、ブルース、ソウルをうまく配合した彼女の持ち味がいい形で表現されている。

Folk Is The New Black / Janis Ian (Cooking Vinyl USA/Rude Girl)

2年ぶりくらい? アメリカの現状を彼女らしいブラック・ユーモアでぶったぎる「デインジャー・デインジャー」で幕開け。アコースティック・ギターとウッド・ベースを核に、ドラムをともなったグルーヴがかっこいい。一気に引き付けられる。その後はぐっとフォークっぽく展開。ウッディ・ガスリーに触発された曲もあり。

Precious Memories / Alan Jackson (Arista)

全米チャートを見ていて、アラン・ジャクソンがまたバカ売れしているから、どんな新作かと思って聞いてみたら、セイクレッド・ソング集でした。カントリー界に限らず、近ごろセイクレッド・ソング~ゴスペルっぽいアルバムを出すアーティストが多い。そういう時代なのかな。で、これもそういうアルバムです。ドラムなし。ひたすらアコースティックに神への敬虔な思いを歌い綴る、と。やなことあったときとか、いいかも。

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