
B.B.キングズ・ブルース・サミット100/ジョー・ボナマッサ
なんじゃ、こりゃ! と。まあ、事前の予測通りとはいえ、暗澹たる気分なもんで。
ブルース聞きます。
こういうときはブルースだな。ブルースに限る。王者、B.B.キングの生誕100年を祝って、ジョー・ボナマッサが企画・制作した豪華トリビュート・セッション。B.B.を敬愛する多くの後輩が集ったCD2枚組(LPは3枚組)。フィジカルは来月リリースみたいだけど、ストリーミングがスタートしたので、スーパーボウル見ながらこれ聞いて憂さ晴らしだ。
ボナマッサの他、バディ・ガイ、エリック・クラプトン、ジョージ・ベンソン、ラリー・カールトン、ロベン・フォード、クリス・ケイン、スラッシュ、ジミー・ヴォーン、デレク・トラックス、ケブ・モ、D.K.ハレル、ラリー・マクレイ、ラーキン・ポー、エリック・ゲイルズ、ゲイリー・クラーク・ジュニア、クリストーン“キングフィッシュ”イングラム、マーカス・キング、ケニー・ウェイン・シェパード、ジョアン・ショウ・テイラーとか、もう書き切れないくらいの新旧ギタリストが勢揃い。
ディオン、マイケル・マクドナルド、スーザン・テデスキ、チャカ・カーン、ボビー・ラッシュ、ジミー・ホール、トロンボーン・ショーティ、キム・ウィルソン、アイヴァン・ネヴィル、ポール・ロジャース、シェメキア・コープランド、マイルス・ケネディ、ジョン・ネーメス、アロー・ブラック、ジェイド・マクレーら強力なヴォーカリストたちも名を連ねてます。
B.B.が1993年にジョン・リー・フッカーからロバート・クレイまで幅広い世代のゲストを招いてレコーディングした傑作アルバム『ブルース・サミット』へのオマージュ。もちろんその盤とかも含めて数多あるB.B.のオリジナル音源聞いたほうがごきげん度はマックスなのは当然ですが、本作もいい。躍動してます。1940年代末に活動を開始して以来、2015年に亡くなるまでにB.B.が積み上げてきた遺産を一丸となって今の時代へと受け継ぐボナマッサとゲストたちの情熱に心躍るばかり。
真っ向からのアップテンポ・ブルースあり、スロー・ブルースあり、ジャンプものあり、ルンバ・ブルース系あり、クルセイダーズとやっていたころのR&B系あり。B.B.の幅広いレパートリーに目配りした選曲もナイス。選曲面からもB.B.の雄大さが伝わってくる。
ちなみにその昔、1990年だったか、B.B.御大と日本のミュージシャンとの共演ライヴというのをお手伝いしたことがあって。そのときのエピソードを2009年に出した『ロック・ギタリスト伝説』という本に書いたことがある。その原稿の一部を抜粋しておきますね。
自慢するわけではないのだが。
あ、いや、嘘です。自慢するんですが。ぼくはB.B.キングをプロデュースしたことがあるのだ。あのブルースの王者、B.B.キングを、だ。すごいね。びっくりだね。といっても、コンサートの話だ。もう20年近く前、B.B.キングが単身来日して、日本のミュージシャンをバックに従えてライヴをやるという企画が立ち上がり。そのとき、共演するミュージシャンのセレクトとか、交渉とか、当日の司会とか、まあ、プロデューサーという名のもと、そういった雑務をこなしたのだった。
感動的だった。本当に。KYON、岡地明、ビッグ・ホーンズビー、吉田建、吾妻光良がベーシックなバック・バンドを編成して、桑田佳祐、山岸潤史、野呂一生、上田正樹といった面々がフロントでB.B.御大と一夜限り、夢のバトルを展開する。ロックを含むすべてのポップ音楽の重要なルーツのひとつがブルースで。B.B.はブルースをすでに60年以上、第一線で演奏し続けている“生きたルーツ”で。いわばB.B.はすべてのロック・ミュージシャンの父なのだ。そんな偉大な父と、海を隔てたこの日本で活躍する息子たちとの感動の共演。素晴らしかった。コンサートはライヴCD化もされたけれど。とにかく、その一端に関われたぼくは、とてつもなく光栄かつ幸運な男だと思う。
本番前日のリハーサルのことも忘れられない。通しリハが終わったところで、B.B.御大が日本人メンバー全員を自分の周りに集めた。そして「ヘイ・ガイズ…」と静かに話し始めた。
「明日は本番だ。でも、ミスを恐れるな。私もかつてある曲のレコーディングをしていたとき、最後のパートでコード進行を間違えてギター・ソロを弾いてしまった。しかし、そのソロは私の心が自然に弾いてしまったものだ。だからレコードはそのまま発売された。今ではむしろ、その間違ったフレーズがその曲に欠かせないものになってしまった。これがブルースだ。ブルースはそんなふうに心から自然にわき出る音楽なんだ……」
なかなか言えませんよ。深い言葉ですよ。60年という歳月、第一線を歩み続けた者にしか言えない説得力に満ちたお言葉。これを直接聞くことができただけで、やった甲斐のある仕事だった。
がんばろう。あきらめないぞーっ!

