Disc Review

Keep Me on Your Mind/See You Free / Bonny Light Horseman (Jagjaguwar)

キープ・ミー・オン・ユア・マインド+シー・ユー・フリー/ボニー・ライト・ホースマン

アナイス・ミッチェル、エリック・D・ジョンソン、ジョシュ・カウフマンからなるニューヨークの男女3人組インディ・フォーク・ユニット、ボニー・ライト・ホースマンのサード・アルバムが届きましたー。

2020年のファースト・アルバム『ボニー・ライト・ホースマン』には一部、昔の曲のカヴァーも含まれていたけれど、2022年のセカンド『ローリング・ゴールデン・ホーリー』は全10曲、3人連名のオリジナルで。今回も引き続き全曲オリジナル。しかも2枚組。でも、どの曲にも米国フォークや英国トラッドの感性が根底にしっかり流れていて。それでいて今ふうのインディー感覚も漂って。伝統と尖鋭とがいい塩梅に共存。このあたり、レコーディング場所の選択が絶妙に物を言ったようだ。

レコーディングが行なわれたのはアイルランドのコーク州バリーデホブにある小さなアイリッシュ・パブというか、地元の音楽好きが集うフォーク・クラブというか、ちょいちょいYouTubeとかでもライヴ映像などを配信している“リーヴィス・コーナー・ハウス”。オーナーのジョー・オレアリーと交流を持ったアナイスさんのアイディアだったらしい。100年以上の歴史があるというお店の年季の入った木造りの佇まいとか、ナチュラルな空気感とかを採り入れたいということで、エリック、ジョシュ、サポート・メンバーのJTベイツ(ドラム)とキャメロン・ラルストン(ベース)、そしてエンジニアのベラ・ブラスコらとともにバリーデホブ入り。ここで収録曲の半分以上のベーシック録音を行なって。

しかるのち、ニューヨーク北部のドリームランド・レコーディング・スタジオへ。これまでのアルバム2作を完成させた本拠地に立ち返って、マイク・ルイス(ベースとテナー・サックス)やアニー・ネロ(ウッド・ベース)らの協力を得て最終的な仕上げが行なわれた。

こうしてアルバム2枚組分の楽曲——18曲と短いおしゃべりトラックふたつ——が完成。ディスク1、ディスク2、それぞれに『キープ・ミー・オン・ユア・マインド』と『シー・ユー・フリー』というタイトルが付けられた。けど、2枚組を通してイメージはひとつ。愛と喪失、希望と悲しみ、コミュニティと家族、変化と時間などを託した楽曲群が並んでいる。

彼らがリーヴィス・コーナー・ハウスに持ち込んだアコースティック・ギターやお店に昔からある古びたアップライト・ピアノの響きと、掛け合いやコーラス・ハーモニーを活かした歌声とを中心に据えたシンプルかつヒューマンな音像で今の空気感を射貫く、みたいな。なかなかにぐっとくる一作です。

リーヴィス・コーナー・ハウスのメインフロアをスタジオ代わりに、収録曲半分以上のベーシックを3日間ほどでレコーディングしたらしいけど、3日目の夜には音楽好きな地元住民も集まって、観客として飲食を楽しみながら作業をあたたかく見守ったみたい。「ホエン・アイ・ワズ・ヤンガー」って曲のビデオクリップにもそんな親密な様子がとらえられている。

「オールド・ダッチ」のクリップにもレコーディングの様子が映し出されていて。ラストに向かってお客さんたちがさりげなく“yeah, I got a feelin’”と声を重ねていく雰囲気とかたまらない。「ロック・ザ・クレイドル」って曲で“ぼくがゆりかごを揺らすよ/そして赤ちゃんをあたたかくしてあげるんだ”というリフレインを最後、やはり店じゅうのみんなで声を合わせる感じとか、曲が終わったところで自然に拍手と歓声が沸き起こる感じとか、なんだか素敵だ。

アナイスさんの特徴的な歌声が活かされた「アイ・ウォナ・ビー・ホエア・ユー・アー」という曲とか。“あなたがいる場所にいたいの/庭で赤ちゃんが泣いてる/木の葉がみんな鮮やかに変わる/そしてあなたは今夜私を抱いている…”という、なんとも穏やかな、ごく当たり前にも思える描写が不思議と沁みます。

ビデオクリップにも映し出されている通り、アルバム・ジャケットもこのパブの壁に飾られていた絵のひとつ。この女性(なんと、ボニーさんって名前だとか)もずっとボニー・ライト・ホースマンのレコーディングの様子を見守っていたってことね。

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