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Disc Review

Lighten Up / Erin Rae (Good Memory Records/Thirty Tigers)

ライトゥン・アップ/エリン・レイ

2015年に“エリン・レイ&ザ・ミーンホワイルズ”名義で自主制作盤『スーン・イナフ』をリリースして世にお目見えしたナッシュヴィルのシンガー・ソングライター、エリンさん。自身のソロ名義による初アルバム『プッティング・オン・エアーズ』をリリースしたのが2018年。これがアメリカーナ・ミュージック・アワードの新人部門にノミネートされるなど、まあ、アメリカーナというか、インディ・フォークというか、まずはそっち寄りのシーンで大いに注目を集めたわけですが。

でも、『プッティング…』を聞いた誰もが、そうしたシーンの枠に収まりきらないであろうこの人の柔軟な可能性を感知したはずで。確かにフォークはフォークだけれど、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコってフォークだよね…的な? そういう文脈でのフォークというか。このほどリリースされた新作では、そのあたりの魅力がさらに広がった感じ。

前作ではアンドリュー・コムズとかと一緒にやっているマルチ・インストゥルメンタル奏者のジェリー・バーンハートや、ミス・テスやロドニー・クロウェルらを手がけているエンジニアのダン・ノブラーらに支えられながら、フォーキーでピュアで、でもコズミックでオルタナティヴなアコースティック・ワールドを編み上げていたエリンさん。

前作リリース以降、世界的パンデミックのせいで活動中断を余儀なくされていた時期、孤独と対峙し、自らの内省へとさらに深く踏み込むと同時に、ステイ・ホームする中でジュディ・シル、マーゴ・ガーヤン、ボビー・ジェントリー、ケヴィン・エアーズ、スコット・ウォーカーなど、より幅広いジャンルの音楽に積極的に接し、イマジネイティヴな旅に身をまかせるようにもなったらしい。

今回はファーザー・ジョン・ミスティ、ジェニー・O、ドーズ、コナー・オバーストなどを手がけてきたジョナサン・ウィルソンがプロデュース。最近、ビッグ・シーフとかも使っていたカリフォルニア州トパンガ・キャニオンのファイヴ・スター・スタジオでレコーディングされた。アンドリュー・コムズとの共作1曲を含む全12曲、すべてエリン・レイのオリジナルだ。

これまでちょいちょい見受けられがちだった、どこか曖昧に音像をにじませる感触もなくなり、楽曲の骨格がくっきりしてきた。そのあたりの評価は人それぞれだと思うけれど、ぼくは歓迎したい。エリンさんがいかにいいシンガー・ソングライターであるか、わかりやすくなった気も。都会と自然、恋と破局、心の闇と癒やし、喧噪と静謐、疎外感をめぐる愛憎、ジェンダーのことなど、アルバムの中に様々なアンビバレンスが魅力的に交錯している。

オープニング・チューンの「キャンディ+カレー」みたいに、もうタイトルからしていきなり妙な取り合わせというか、食い合わせというか、深読み歓迎っぽい手触り満点の曲もあるし。「マインド/ハート」って曲では、“マインドはファック、でもハートはピュア”とか歌っているし。アルバム・タイトルの元になっている「ライトゥン・アップ&トライ」では、何というか、こう、あんまりがんばらないようにがんばれ、みたいな…(笑)。

エリンさんがヴォーカルとアコースティック・ギター。ジョナサン・ウィルソンがドラム、ギター、メロトロン、ハーモニウム、ハープシコードなどを担当。ジェイク・ブラントン(ベース)、ドリュー・エリクソン(キーボード)らもサポート。曲によってはペダル・スティールとかヴィブラフォンとかストリングス・アンサンブルとかも導入されている。ケヴィン・モービー、ハンド・ハビッツことメグ・ダフィー、ナイ・オーらシンガー・ソングライター仲間も客演してます。

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