Disc Review

The Bootleg Series Vol. 18: Through the Open Window 1956–1963 / Bob Dylan (Columbia/Legacy)

スルー・ザ・オープン・ウィンドウ 1956-1963:ブートレッグ・シリーズ第18集/ボブ・ディラン

なんか、またすっごいのが出ちゃいましたよ。ほんと、金もなければ時間もない…みたいな状況下、どうしたらいいのやら。もちろん、うれしいんだけどさ。うれしいんだけど、大変な年末になってきました。

ボブ・ディランの初期貴重音源を総まくりしたCD8枚組。

すごいです。でも、他にも、先日紹介したブルース・スプリングスティーン4CD+ブルーレイがあって、ジョン・レノンの9CD+3ブルーレイがあって、間もなく出るジミ・ヘンドリックス4CDとかビートルズ8CDとかローリング・ストーンズ4CD+ブルーレイとかもあって…。

でも、飛ばし聞きとか倍速再生とかできるわけもなし。落ち着いて順番に聞いていきましょう。

というわけで、ディランの最新ブートレッグ・シリーズ。例の映画『名もなき者(A Complete Unknown)』に合わせた感じで、キャリアの最初期、1956年から1963年まで、故郷ミネソタで育ったロバート・ジママン少年がニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのフォーク・シーンへと身を投じ、やがて“ボブ・ディラン”というクリエイターへとなっていくまでの歩みを、ホーム・レコーディング、スタジオ・アウトテイク、ライヴなどを交えた未発表音源で追ったボックスだ。

8枚のCDに、48曲の初出パフォーマンス、38曲のきわめてレアな音源を含む全139トラック。やばい。1956年、まだロックンロール・ファンだった15歳のころ、サマー・キャンプで知り合った友だちらと結成した3人組“ジョーカーズ”としてシャーリー&リーのR&Bヒット「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」をカヴァーした私製アセテート盤音源でスタートして。

大学に入ってフォーク・ソングに興味が移った1960年、ミネアポリスの自室に友だちを集め、その前で歌ったプライベート録音や、同年、ウィスコンシンで記録されたプレイベート録音などを挟んで、1961年以降、ニューヨークへ出てきてからの初期ライヴ音源や、スタジオ・レコーディング時のアウトテイク、ラジオ出演時のパフォーマンス、ハーモニカ奏者として呼ばれたキャロリン・ヘスターやハリー・ベラフォンテ、ビッグ・ジョー・ウィリアムス、ヴィクトリア・スピヴィーらとのセッションなどへ。

「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」の生まれたての時期のライヴ音源とか、まだ2番までしかなかったりして、最強に興味深い。映画でも印象的に描かれていた、スージーと出会ったことでおなじみリヴァーサイド教会でのパフォーマンス時の放送音源とかもずいぶん音が整ってるし。1963年のグリーンウッドでの有権者登録集会の音源とかも、途中でヨレたりするものの、ここまでちゃんとフルで聞けるだけで驚き。

『ボブ・ディラン』『フリーホイーリン』『時代は変る(The Times They Are A-Changin’)』のアウトテイク群ももちろんワクワクものだし。

中には『ブートレッグ・シリーズ第1〜3集』とか過去のブートレッグ・シリーズとか、著作権保護のための50周年リリースとか、フォークウェイズ・レコードのコンピレーションとかで既出のものもあるのだけれど、それらも含めて初期音源をこれだけまとめて浴びることができるのは本当にうれしい。

で、最終的にディスク7と8で、必殺、1963年のカーネギー・ホール公演へと至るわけだけれど。このころのディランの弾き語りをフォーク・クラブとか小ホールで聞いてみたかったなぁ…という見果てぬ夢を、なんとなく叶えてくれているような、いやいや、さらに叶わぬ思いをかきたてるような、そういう超やばい箱。CD2枚組とかLP4枚組のハイライト版も出ているけれど、限定の8枚組がいいです。断然。

ショーン・ウィレンツによる詳細なライナーも読みでがたっぷり。国内配給分にはその全訳もついてます。ストリーミングは2枚組ハイライト版しかないのかな? いちおうそこにリンク貼っておきます。

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