
リターニング・トゥ・マイセルフ/ブランディ・カーライル
ここ数年はジョニ・ミッチェルとかエルトン・ジョンとかタニヤ・タッカーとか、敬愛する先輩方のもとで、素晴らしいお世話をし続けてくれていたブランディ・カーライル。
2021年の『イン・ジーズ・サイレント・デイズ』以来となる自身名義のソロ・アルバム、出ました。『リターニング・トゥ・マイセルフ』。自分自身に戻る、というタイトルがなんだか印象的だ。
でも、オープニング・チューンでもあるアルバム表題曲は、どこか孤独な決意を表明しているかのように見えながらも、実は人と人とのつながりにこそ目を向けた曲だったりして。泣ける。なぜわれわれは自立を美徳とするのか? 限りある人生においては、人と人とのつながりという、複雑で、不完全で、面倒なもののほうがずっと興味深いはずなのに…的な?
“私はあなたを愛するために生まれてきたの/あなたを愛している/自分に立ち返るというのはなんて孤独なことなの/けれど、自分に立ち返ることはあなたのもとへ戻ること/それが私のしたいたったひとつのこと”というフレーズが沁みます。
他人とのつながりというテーマが、常に背後に“無常感”を伴いながらアルバム全体を貫いている感じ。
続く「ヒューマン」って曲の“わかってるよね?/時は誰の味方でもない/私たちはただの人間/結末を見なくてもわかる/もう二度と今の私たちには戻れない…”とか“「永遠」なんて言葉はきっと「うまくいったね」程度の意味”みたいなフレーズもぐっときた。
長年の関係がいつの間にか惰性に変わる危うさ、儚さが歌われた「アニヴァーサリー」って曲もなんだか印象的だった。
そして「ジョニ」。もちろん、ジョニ・ミッチェルのことを歌った曲で。ジョニを偉大なスピリットを持つ“野生の女”に喩えつつ、心からの賛辞を綴っている。“踊りに行こうよ、ジョーン/私に寄りかかって/私はふらついたりしないから/5ドルのブラックジャック・テーブルを見つけてディーラーを喜ばせよう/「愛してる」と彼女に伝えると彼女は「オーケー」と答える/それが彼女なりの愛なんだ”という歌詞に、なんだか二人の信頼関係が表れているようで。またまた泣けます。
まあ、そんな感じのアルバム。相変わらず歌はうまいし、いい曲書くし。さらなる進化も感じられるし。素晴らしいです。

