Disc Review

Duets Special / Chrissie Hynde & Pals (Parlophone)

デユエッツ・スペシャル/クリッシー・ハインド

プリテンダーズのクリッシー・ハインド。これまでもソロ名義では、ブライアン・ウィルソンやニック・ドレイク、キンクスなどの曲も交えつつジャズ・スタンダード中心のカヴァー・アルバム『ヴァルヴ・ボーン・ウォー』を2019年にリリースしたり、ギタリストのジェイムズ・ウォルボーンを伴ってボブ・ディランのカヴァー・アルバム『スタンディング・イン・ザ・ドアウェイ:クリッシー・ハインド・シングズ・ボブ・ディラン』を2021年にリリースしたり…。

まあ、もともとプリテンダーズとしてのデビュー曲もキンクスの「ストップ・ユア・ソビン」のカヴァーだったし、UB40とのコラボでソニー&シェールの「アイ・ガット・ユー・ベイブ」をヒットさせたこともあったし、フランク・シナトラのデュエット・アルバムに参加して「ラック・ビー・ア・レディ」を歌ったこともあったし。カヴァーには縁があるというか。もともと音楽ジャーナリストだったこともあるクリッシー姐さんだけに、レコード・コレクションには自信があるらしく、選曲センスとかも最高だし。

と、そんなクリッシー姐さんの新作はまたまたカヴァー。しかも『デュエッツ・スペシャル』というタイトルからもわかる通り、デュエットもの。でもって、これがまた古いところから新しいところまで、超ジャンルの選曲も人選も実に興味深い仕上がり。曲順を追っておさらいしておくと——

  1. ビリー・ポールの「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」(1972年)をk.d.ラングと。
  2. エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない(Can’t Help Falling in Love)」(1961年)を故マーク・ラネガンと。
  3. ローリング・ストーンズの「スウェイ」(1971年)をルシンダ・ウィリアムスと。
  4. フレッド・ニールの「ドルフィンズ」(1967年)をデペッシュ・モードのデイヴ・ガーンと。
  5. モリッシーの「ファースト・オヴ・ザ・ギャング・トゥ・ダイ」(2004年)をキャット・パワーと。
  6. ブレンダ・リーの「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」(1972年)をルーファス・ウェインライトと。
  7. ブレンダ・ハロウェイの「エヴリ・リトル・ビット・ハーツ」(1964年)をカーリーン・アンダーソンと。
  8. 10CCの「アイム・ノット・イン・ラヴ」(1975年)をザ・キラーズのブランドン・フラワーズと。
  9. ビートルズの「イッツ・オンリー・ラヴ」(1965年)をジュリアン・レノンと。
  10. ロウの「トライ・トゥ・スリープ」(2011年)をブロンディのデボラ・ハリーと。
  11. キャス・マックームズの「カウンティ・ライン」(2011年)をアラン・スパーホークと。
  12. ケティ・レスターの「ラヴ・レターズ」(1961年)をガービッジのシャーリー・マンソンと。
  13. ライチャス・ブラザーズの「ソウル・アンド・インスピレーション」(1966年)をブラック・キーズのダン・アワーバックと。

もともとこのプロジェクト、クリッシーさんがルーファス・ウェインライトと何かしたいと思ったことをきっかけに始まったらしく。そういう意味でもルーファスとの「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」はある種のハイライトか。その「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」や「ラヴ・レターズ」はエルヴィス・プレスリーのレパートリーでもあって。そうするとエルヴィス関連曲が3曲というのも、ファンとしてはなんだかうれしい。

不倫の歌を女性どうし、k.d.ラングと歌う「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」とか、ビートルズ・ナンバーを作者の息子さんと歌う「イッツ・オンリー・ラヴ」とか、キャット・パワーとのモリッシーとか、デビー・ハリーとのロウとか、アラン・スパーホークとのキャス・マックームズとか、ダン・アワーバックとミニマルなアレンジでソウルフルに聞かせる「ソウル・アンド・インスピレーション」とか、いい仕上がりのコラボがたくさん。

興味ある方はオリジナルとの聞き比べとかも楽しいかと。

しかし、いつも思うのだけれど。日本のApple Musicって、なんでクリッシー・ハインドのソロもプリテンダーズ名義にしてるんだろう。しかもカタカナで。意味わからん。

まず第一に洋楽の中途半端なカタカナ表記やめてくれ。全部が全部カタカナとか邦題になっているなら、まだあきらめもつくのだけれど、一部だけ思いついたみたいに日本語表記になってるのは迷惑でしかない。やるなら英語でも併記してほしいです。切に希望します。

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