Disc Review

A Matter of Time / Laufey (Vingolf/AWAL)

ア・マター・オヴ・タイム/レイヴェイ

スタジオ・フル・アルバムとしては3作目…という数え方でいいのかな。レイヴェイ、2023年の『ビウィッチト』に続く新作アルバム、ようやく出ました。

今年の4月からほぼ月イチでリリースしてきた先行シングル4曲(「シルヴァー・ライニング」、「タフ・ラック」、来日したときにクリップも撮った「ラヴァー・ガール」、そして「スノウ・ホワイト」)を含む全14曲。今回もプロデュースはスペンサー・スチュワートとアーロン・デッサー。

ジュリー・ロンドンを意識したようなアルバム・ジャケットの感触も含め、相変わらずグレイト・アメリカン・ソングブックの時代を崇めつつ、その豊かな音楽性をある種の“聖典”に、ジャズ、ボサ・ノヴァ、ミュージカル、ポップ、クラシックなどを融合した独自の音世界を繰り広げていく…というイメージが今回も大筋にはなっているのだけれど。

ただ、これまでに比べてぐっとセクシーさを増したジャケット同様、歌詞の面でも音の面でも、ちょっぴり大人になったのかな的な仕上がりにはなっていて。

もちろん、気になる男の子のこととか、淡い恋心とか、お洋服のこととか、そういうロマンチックな物語を歌詞で綴る従来の路線を引き継いだ曲もあって。そのあたりの曲は、きっと若い女の子ファンにとって一緒に口ずさみたくなるような、あるある系の歌詞なのかも。まあ、おじさんファンにはよくわかりませんが(笑)。

今回はそれらに加えて、もうちょい内省の奥まで踏み込んで、自身の深いところと対峙しようとしていたり、友との別れを描いていたり、怖れを吐露していたり…。そんなアプローチもあるみたい。

最悪のタイミングで出会った人と気まぐれで恋に落ちて、薔薇色の罪の野原でバレエを踊って、最後、“あなたが地獄に行くなら私も一緒に行く”とつぶやく曲があったりするんだから。昨深夜にアルバムのストリーミングが始まったばかりで、まだあんまりちゃんと聞き込めておらず、これまたよくわかりませんが(笑)。

音的にもだいぶ幅を広げた感があって。グレイト・アメリカン・ソングブック系ばかりでなく、60年代サンシャイン・ポップ的なものとか、フォーク系とか、70年代MORものとか、そのあたりの多彩なムードも随所に。アンサンブル的にもだいぶ充実してきて。とにかく、成長の確かな手応えを届けてくれる1枚ではあります。

まあ、個人的にはやっぱりファーストとか、もしかしたらいちばん最初のミニ・アルバムとかの、ひたすら簡素にレトロな曲を素敵に綴るだけの無垢なレイヴェイちゃんのほうに今なお心惹かれるところはあるし。ブルーノート東京での、たったひとりの初来日ステージの感触とかがやっぱり忘れられないのだけれど。

でも、みんな大人になるからねー。変化していくのは当然。これからもっと聞き込んで、変化を味わってみます。

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