Disc Review

Coastal Soundtrack / Neil Young (Reprise)

コースタル・サウンドトラック/ニール・ヤング

4月17日に一部の映画館で一夜限り、劇場公開されたニール・ヤングのドキュメンタリー映画『コースタル』。2018年の『パラドックス』に続いて妻のダリル・ハンナが監督した作品ですが。2023年、新型コロナ禍が明け、4年ぶりにコンサート活動を再開したニール・ヤングの姿が描かれているとのことで。ものすごく興味を惹かれているのだけれど。

もちろん、ぼくは今のところ未見。あちこちのサイトでちらちら情報をゲットしているだけ。で、映画の内容に関しては賛否渦巻いていて。というか、否、のほうが多いかも。ずいぶんと淡々とした作品らしく。ライヴと関係のないシーンもえんえんあるみたいで。その辺をどう評価するかで意見がまっぷたつ。しかも、エンド・ロール部分以外はモノクロだとか。

まあ、映画についての評価はちゃんと見ることができてからすることにして。まずはそのサウンドトラック・アルバムのほうを紹介しておきましょう。これ、実はストリーミングが4月18日にスタートするはずだったのだけれど。なぜかすぐに配信が止まってしまって。どうしたんだろうと思っていたら。

もうフィジカルを入手した方はおわかりだと思うけれど。もともと演奏のみのインスト・ヴァージョンというか、ギターやピアノによる伴奏のみが収録される予定だった「エクスペクティング・トゥ・フライ」と「ソングX」と「アイ・アム・ア・チャイルド」になぜだかCDやLPでは小さく囁くようなヤングさんのヴォーカルが入っていて。しかも「アイ・アム・ア・チャイルド」ではヴォーカルとハーモニカが同時に鳴っていたり…。

コンサートのサウンドチェックの際にガイドで歌った音をマイクが拾っちゃったものなのか、ミックスの際に後からダビングされたものなのか、そもそも何のために入れた音なんだか、さっぱりわからないのだけれど(笑)。それがストリーミングされ直したニュー・ヴァージョンのほうではすっかり消えて、本来意図していたらしき伴奏のみのインスト・ヴァージョンになっている。

「ラヴ・アース」も、リリースされたファースト・ヴァージョンではヴォーカルと同時にハーモニカが聞こえる個所があったり、簡単なパーカッションが聞こえたりしていたけれど、これもニュー・ヴァージョンではなくなって。

で、とにかくこれは間違いだった、ミスだった、自分がすべて悪い、と。ヤングさんが慌てて宣言。ファースト・プレスの出荷を止めて、買った人には新たに作り直したセカンド・プレスを6月ごろに発送するとワーナーからお知らせが届いた。いやいや。またとんでもないコレクターズ・アイテムができちゃったというドタバタ。

でも現在はすでに新たなヴァージョンでのストリーミングもスタートしていて。セカンド・プレスが届くのを待つまでもないか、と。本ブログでも紹介しておくことにしました。去年の暮れに、このツアーで披露された曲から13曲をピックアップして改めてスタジオ録音したアルバム『ビフォア・アンド・アフター』を紹介したことがあったけれど——

それとペアになっている1枚というか。そのライヴ録音版って感じ。そこで書いたことの繰り返しになりますが。このツアー、先述した通り、2023年の6月末から7月いっぱい、ロサンゼルス、サンタ・バーバラ、サンディエゴ、バークレー、レイクタホなどカリフォルニア州各地およびオレゴン州やワシントン州など海沿いを巡ったもので。

これまであまりライヴで取り上げてこなかったレパートリーが選ばれているのが話題だった。今回は11曲入りで、『ビフォア・アンド・アフター』とダブってるのは4曲かな。先述した「エクスペクティング・トゥ・フライ」や「アイ・アム・ア・チャイルド」のようなバッファロー・スプリングフィールド時代の曲から、2022年の「ラブ・アース」みたいな新しいところまで、まあ、いろいろ問題はあったとはいえ(笑)、こっちでしか聞けない曲もたくさん。

ヤングさんはギター、ハーモニカ、ピアノを演奏しながら基本ひとりでパフォーマンス。コロナ禍明けという状況下、観客と親密に接することができるようになったことを喜びながらパーソナルな歌声をじっくり聞かせている。機材トラブルっぽいノイズも混じり込んだりして、それがまたなんともスリリングな臨場感を演出。いくつかの曲でボブ・ライスがキーボードやヴァイブをそっと添えているみたい。

半世紀以上に及ぶキャリアの中で生まれた自作曲たちを、古いものも新しいものも全部分け隔てなくごちゃ混ぜにしつつ、そこに変わらず生き続ける普遍の強さとか、作られた当初には奥底に潜んでいた新たな視点とかを、時代を超えて表出させたライヴ盤という感じかな。映画は見るのがちょっと怖いけど(笑)、やっぱりこの人のソロ・ライヴはいいな、と。改めて感じた1枚です。

6月にはザ・クローム・ハーツを従えての新作アルバムのリリースも控えているヤングさん。今年も追いかけるのが大変そうだなぁ。

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