
ザ・バイウォーター・セッションズ/ジョン・クリアリー
本ブログではタイミングが合わず、再発盤とか、前回の来日に合わせて編まれた日本独自のベスト盤とか、そういうものしか紹介したことがなかったけど。
ジョン・クリアリー。英国生まれながら、もはやニューオーリンズR&B/ファンクの正統的継承者としてシーンを支えるごきげんなピアニスト&シンガー。本格的なオリジナル・スタジオ・アルバムとしては2018年の『ダイナマイト』以来、約7年ぶりとなる新作、出ました。
1970年代にブライアン・フェリー絡みの仕事で台頭した後、1990年代以降は、バディ・ガイとかタジ・マハールとかマリア・マルダーとかケブ・モとか、あともちろんジョン・クリアリーとか、ルーツ寄りの名盤にたっくさん関わっているジョン・ポーターが共同プロデュース。
今回もバンドはご存じ“アブソリュート・モンスター・ジェントルメン”。クリアリー(ピアノ)、コーネル・ウィリアムス(ベース)、A.J.ホール(ドラム)という不変のトリオを核に、レタスのナイジェル・ホール(オルガン)、ロニー・スコッツ・オールスターズのペドロ・セグンド(パーカッション)、レデシーとかモノネオンとかとの仕事で知られるザヴィア・リン(ギター)、デルフィーヨ・マルサリスのアップタウン・ジャズ・オーケストラにも参加しているアーロン・ナルシース(テナー・サックス)、元ギャラクティックのジェイソン・ミングルドーフ(バリトン・サックス)、スクィーレル・ナット・ジッパーズの一員だったこともあるチャーリー・ハロラン(トロンボーン)という顔ぶれが勢揃い。
ハリケーンで大変な被害を受けたニューオーリンズのバイウォーター地区にあるクリアリーの自宅スタジオ、FHQ(ファンク・ヘッドクォーターズ)の修復をようやく終えて、去年、彼らニューオーリンズの腕ききたちを召集。2日間ほどですべてを一発録りしてしまったのだとか。かっこいい。新曲あり、過去曲の再演あり、初カヴァー曲あり、再カヴァーものあり。これがアブソリュート・モンスター・ジェントルメンの現在形だ、と。そういうことらしい。クリアリーが言うところの“ソフィスティケイトされていて、ナスティで、グッド・タイムで、ロウ・ダウンな”ニューオーリンズ音楽が今回も全編にたっぷり溢れてます。全曲ごきげんだけど、個人的にはメレンゲのグルーヴからピアノ曲「チョップスティック」のメロディまで、何から何までぐっしゃぐしゃに交錯する「ピックル・フォー・ア・ティックル」って曲が今回のベストかな。
基本的には10曲入りだけれど、日本盤とかストリーミングは去年のニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスでのライヴ音源3曲をボーナス追加。日本盤CDにはジョン・クリアリーといえばこの人って感じのピーター・バラカンさんのライナーも。クリアリー自身によるプレスリリースを訳してくれたりもしていて、ありがたい限り。
9月にはまた来日もあるみたい。今回はホーン・セクションも加えた編成らしく。こりゃやばい!