Disc Review

Back to My Roots / Candi Staton (Beracah Records)

バック・トゥ・マイ・ルーツ/キャンディ・ステイトン

年齢のことだけ云々するのも意味がないとは思うけれど。でもねー。1940年生まれってことだから、今年85歳を迎えるキャンディ・ステイトン。1943年生まれ説もあるけれど。それにしたってすごいです。しかも、全然歌えてるから。かっこいいです。80歳超えで新作リリース。2018年の『アンストッパブル』以来かな? 通算32作目のアルバムだ。

おねーちゃんのマギーと妹のネイオミとともにジュエル・ゴスペル・トリオの一員として本格的に歌い始めたのが1953年のことだというから、すでにキャリア70年超え。クラレンス・カーターが紹介してくれたリック・ホールの下でソロ・キャリアをスタートさせたのが1968年なので、ソロ活動も60年近い。

サザン・ソウル時代あり、ディスコ・クイーン時代あり、ゴスペルに回帰した時期あり、さらに往年のヒット曲がクラブ・シーンでリヴァイヴァルしたり映画に使われたりして復活した時期あり…。先月、UKアメリカーナ・ミュージック・アワードで国際生涯功労賞を受賞したのも当然。お元気でうれしい限り。

と、そんなふうに時代ごとに多彩な表情をたたえながら長年活動してきたキャンディさんだけに、今回の表題『バック・トゥ・マイ・ルーツ』ってのはなかなかに深い。オリジナル、カヴァー取り混ぜつつ、ゴスペル、ブルース、1963年9月15日にバーミンガムの教会爆破事件で4人の黒人女性が死亡した事件を痛切に綴るメッセージ・ソング、ローリング・ストーンズの「シャイン・ア・ライト」のカヴァーなど、実にしびれる選曲。

ブラック・ゴスペル・シーンを代表するギタリストのジョナサン・ドゥボース・ジュニア、ブルースのラリー・マックレイ、おねーちゃんのマギー・ステイトン・ピーブルズ、スタックス仲間のウィリアム・ベルらが曲によって客演。マギーとは子供のころママがよく歌ってくれたという「イッツ・ゴナ・レイン」と「谷間の静けさ(There Will Be Peace In The Valley)」をデュエット。ウィリアム・ベルを迎えた「マイ・ゴッド・ハズ・ア・テレフォン」は、なんとアーロン・フレイザーが2017年にリリースしたナンバーのカヴァーだ。

ラストを締めくくる「イン・ゴッズ・ハンズ、ウィー・レスト・アントラブルド」は故ラリ・ホワイトがかつてキャンディさんのために書き下ろしたナンバー。そのときはレコード会社側からのOKが出ずお蔵入りしてしまったらしい。が、キャンディさんはその曲を大切にとっておいて、今回、ついに満を持してレコーディングを実現させたとのこと。

キャンディさんはタミー・ワイネットの「スタンド・バイ・ユア・マン」や、エルヴィス・プレスリーの「イン・ザ・ゲットー」や「サスピシャス・マインド」などを取り上げて独自のアプローチでヒットさせたこともある人だけに。カントリーだろうがロックだろうが、どんな曲でも自分が歌えば自分のものになるという確かな自信と手応えが痛快です。

今のところデジタル・リリースのみ。フィジカル、熱望します。

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