ミディアム・ロウ/アーリー・ジェイムス
2022年、本ブログでもセカンド・アルバム『ストレンジ・タイム・トゥ・ビー・アライヴ』を紹介したことがあるアラバマ出身のシンガー・ソングライター、“アーリー・ジェイムス”ことフレデリック・ジェイムス・マリス・ジュニア。
およそ2年半ぶりの新作、出ました。今回もプロデュースはダン・アワーバック。過去2作はすべてナッシュヴィルにあるアワーバックのイージー・アイ・サウンド・スタジオでレコーディングされていたけれど、今回はなんとナッシュビルの写真家/画家/アーティストのバディ・ジャクソンが所有する“ホンキー・シャトー”なる築100年以上、天井の高い古い民家での宅録。もちろんアワーバックのアイディアだ。
というのも、アワーバックが初めてアーリー・ジェイムスの音楽を聞いたとき、彼はギター1本を抱えて、シンプルなバック演奏のみで吠えるように歌っていた、と。今回はその頃のパワーを再現したいと思ったとき、かつてフレッド・マクダウェルやライトニン・ホプキンスが民家でとてつもなくディープなブルースを家で録音していたことを思い出して、このシチュエーションを用意したらしい。
そのお家に、名門フェイム・スタジオでリック・ホールが使っていた1950年代のユニバーサル・オーディオの真空管コンソールを持ち込み、1階の部屋と2階の部屋と廊下とにそれぞれマイクを立てて、アーリー・ジェイムス(ヴォーカル、ギター)、エイドリアン・マーモレホ(ベース)、ジェフリー・クレモンズ(ドラム)という最小限のトリオ編成を基本に、曲によってはサム・バッコのパーカッションを交えつつ、一発録りとマルチ・トラック・レコーディングとの真ん中くらい、まさに半生、“ミディアム・ロウ”なセッションが行われた。後からスタジオでオーヴァーダビングを施したのは2曲だけだとか。
全12曲中、ジェイムズのオリジナル。単独名義ものは7曲あって。うち「ディグ・トゥ・チャイナ」は2018年にアーリー・ジェイムス&ザ・レイテスト名義でリリースしたファーストEPに収められていたナンバーの新録だ。他はアワーバック、パット・マクローリン、ジェフ・トロットら、たぶん主にナッシュヴィル系の人脈との共作曲。
アワーバックの思惑通り、往年のフレッド・マクダウェルっぽいテイストもあるし、Gラヴ&ザ・スペシャル・ソースっぽい手触りもあるし、クレイジーホースみたいな局面もあるし、思いきりロカビリーっぽいアプローチもあるし。やっぱり一筋縄にはいかない、目が離せない存在だな、と改めて。
かっこいいっす。