Disc Review

Paper Tigers / State of the Union (Reveal Records)

ペイパー・タイガーズ/ステイト・オヴ・ザ・ユニオン

ザ・バイブルでの活動でもおなじみ、英シンガー・ソングライターのブー・ヒューワーディーンと、米ギタリスト/シンガーのブルックス・ウィリアムスによるデュオ・ユニット、ステイト・オヴ・ザ・ユニオン。

4作目、出ました。今回も二人だけのレコーディングで。まじ、2本のアコースティック・ギターとふたつの歌声だけ。過去イチ徹底した形でオーヴァーダブなしのライヴ一発録り。ほのぼのと、懐かしく、フォーキーで、ジャジーで、シンプルで、マジカルな音世界を完璧に編み上げている。むちゃくちゃいい。

前作『ザ・ソルトウェル・セッションズ』はカヴァー・アルバムだったけれど、今回カヴァーものはリッキー・ネルソンの「ロンサム・タウン」のみ。それ以外は全曲、基本的にはブーとブルックスの共作。1曲にだけブーの息子、ベン・ヒューワーディーンが名を連ねている。

オープニングの「ジョーンジン・オーヴァー・ユー」で一発ノックアウトです。“Jones”は“何かを切望する”みたいな意味の古い言い回しらしく。そういう表現を使うことからして、二人の狙いがいきなり表明されている感じ。

以降も、時にエヴァリー・ブラザーズのように、時にジェフ&マリア・マルダーのように、時にエルヴィス・コステロ&Tボーン・バーネットのように、時にミルク・カートン・キッズのように、二人の声とプレイを的確に、精緻に、しかしたっぷりの遊びをけっして忘れることなく重ね合わせていく。1曲、二人のギターの腕前を存分に堪能できるインストもあり。

歌詞も一見ほのぼのしているようでいて、ちょっとキンクスっぽいシニカルなひねりもまぶされているようで。油断ならない。フィジカル、バンドキャンプでしか見かけておらず未入手なもんで、今のところストリーミングで聞いているだけ。歌詞情報もなく、よくはわからないんだけど。

なんとなく耳に飛び込んできて、ぐっと惹きつけられたフレーズとしては、何年か前に出たシングル曲をちょっとだけテンポを落として再演した「ホワイ・ダズ・ザ・ナイチンゲール・シング?」に出てくる一節とか。ノスタルジックな旋律に乗せて、“いつその古い歌を覚えたんだ?/俺の心を粉々にした歌/去ってしまった喜びの音/別れの音…”ってナイチンゲールに問いかけるとことか。

あと、ラストの「イフ・アイ・ワズ・ユア・ガーディアン・エンジェル」の、“君が夢見ている間、ぼくが見守っていてあげる/モンスターを遠ざけ、悪魔を寄せつけない/でもぼくはただ君を愛しているだけの人間/完璧じゃないことはわかっている、本当さ/ぼくは君の守護天使じゃない/でもぼくはきっとそうするしかないんだ…”って、子守歌のように歌われるとことか。ちょっと泣けました。

その辺、まだちゃんと味わいきれてはいないのだけれど、よーく聞き込んでみたいものです。このアルバム用の動画とかないみたいなので、ちょっと昔のライヴ映像、貼っておきますね。ne.

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