プレシャス・デイズ/竹内まりや
竹内まりや、10年ぶりのオリジナル・アルバム『Precious Days』。もう今さらぼくが本ブログで紹介するまでもなく。誰もが出たことをよーく知っているうえ、すでに売れまくっているニュー・リリースではありますが。でも、やっぱり触れておきたいことがあって。ちょこっとだけ書かせていただきます。といっても、これ、以前も何かの機会に本ブログで書いたことがある話の繰り返しなのだけれど。
ぼくが大好きな曲のひとつにアンディ・ウィリアムスの「メイ・イーチ・デイ」というのがあって。
この曲の歌詞は、要するに、1週間のうちの毎日がそれぞれいい日でありますように、ひと月のうちの毎日がいい日でありますように、週が月となり、月が年となり、そこには悲しみも喜びも笑いも涙もあるだろうけど、ただ、私が神さまに祈るのはたったひとつ、あなたの毎日が愛にあふれた素敵な日でありますように、ということだけ…みたいな。
まあ、実にストレートな、聞くたびに毎度泣けてきてしまう曲。で、この歌詞の最後の2行というのがまた沁みるというか。
May each day in your life be a good day
And good night
この曲、かつて日本でも毎週放送されていたテレビの『アンディ・ウィリアムス・ショー』のエンディング・テーマとしても使われていたので、最後の行がぐっと効いてくる。意味としては“あなたの人生のうちの毎日がいい日でありますように/おやすみなさい”と、まあ、普通に訳すとしたらそういうことなのだけれど。見ればわかる通り、これって“おやすみなさい”の意味を持ったグッド・ナイトと、“いい日”=グッド・デイと対を成す“いい夜”という、そのものの意味を持ったグッド・ナイトとのふたつのイメージが重なり合っていて。そんなこともまた、なんだか泣けるというか。
とにかく大好きな1曲だ。と、そんな大好きな曲を、今回、まりやさんがニュー・アルバム『Precious Days』のラスト・チューンとしてカヴァーしていて。これが個人的になんとも感慨深かった、と。そういう身勝手な話です。
考えてみれば、まりやさんが紡ぐ歌詞というのは、この「メイ・イーチ・デイ」のメッセージと重なるというか。毎日がスペシャルというか。日々のふとした瞬間に潜むなんでもない出来事に、実はいろいろなメッセージがある、みたいな? そういう意味でもデビュー45周年にして、とても素敵なルーツ表明をしてくれたのかなという気もして。
まりやさんはこの曲を服部克久さんのアレンジで歌いたいと以前から考えていたのだとか。でも、服部先生が亡くなってしまって、ああ、もう歌えないかな…と思ったら、息子さんの隆之さんが後を引き継ぎ、お父さんっぽい極上テイストでアレンジしてくれた、と。そんな美しい世代のリレーの下、こうして名曲の素敵なカヴァーがまたひとつ生まれたわけだ。ほんと、歌は人間の人生を超えるな。
この曲が収められただけでも今回の『Precious Days』、ぼくにとってプレシャスなものになりました。ちなみに、他の収録曲の中でぼくが個人的に気に入っているものを列挙しておくと——
本アルバムのための録り下ろしではないものの、2018年、映画『あいあい傘』の主題歌として山下達郎、島村英二、伊藤広規、難波弘之という鉄壁の布陣にハルナのバック・コーラスを従えてレコーディングされた「小さな願い」とか、去年暮れのポケモン曲「君の居場所」とか、達郎さんのトゥワンギー・ギターにしびれる「Days of Love」とか、やはり達郎さんの多重ドゥーワップ・コーラスをいわば贅沢なSEのように使った「Coffee & Chocolate」とか…。
いや、きりがないな。1曲目、午前中のワイドショーのテーマ曲として毎日耳にしているおなじみのコーラスで始まって、で、ラストが「メイ・イーチ・デイ」の“グッド・ナイト”で終わる。その間をたくさんの名曲が埋めていて。今回も間違いなくクセになる1枚。来年のアリーナ・ツアーも楽しみです。