ソングズ・フロム・ア・サウザンド・フレイムズ・オヴ・マインド/ケイト・ボリンジャー
米ヴァージニア州シャーロッツヴィル出身、現在はロサンゼルスを本拠に活動する注目のシンガー・ソングライター、ケイト・ボリンジャー。
お母さんが音楽療法士をやっていたりしたことからケイトさんも子供のころから音楽に親しみながら育って。ハイスクール時代から宅録を始めて、2017年、19歳か20歳のころに音楽仲間とともに自主制作したEPをリリース。
これはさすがに当時聞いたことがなかったのだけれど、その少し後、2018年に出たシングル「テスツ」ってのをバンドキャンプで聞いて。フォーキーで、ちょっぴりジャジーで、サンシャイン・ポップっぽいところもあって、なんかそこはかとなくいいなぁ…と。ちょっと惹かれていたら、2019年のEP『アイ・ドンド・ウォナ・ルーズ』に収められていた「キャンディ」って曲がカニエ・ウェストによってサンプリングされたりして、一気に注目度がアップして。
以降は着実なペースでリリースされるEPを聞きながら、付かず離れずの距離感の下、その成長ぶりを眺めさせてもらってきたわけですが。
そんなケイトさんの初フル・アルバムがついに出た。スペースボム・レコードの主宰者であるマシュー・E・ホワイトや、ビッグ・シーフなどとも仕事しているサム・エヴィアンとかの力を借りつつ、ロサンゼルスやニューヨークでレコーディング。
ジャングリーなギター・ポップあり、バロック・ポップあり、ガレージっぽいポップ・サイケ感あり、ローレル・キャニオン系シンガー・ソングライターふうあり、フレンチ・ポップふうあり、ジャジーなアプローチあり、初期ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを思わせるインディ・フォークものあり。かと思えばペイヴメントあたりに通じるようなナインティーズ・オルタナ感も漂っていたり。時空を奔放に行き交うイマジネイティヴなポップ・コラージュというか。
この人、大学では映画を専攻していたとかで、実際映像クリエイターとしても、半年くらい前、ジェシカ・プラットの「ワールド・オン・ア・ストリング」のビデオクリップの監督やったりしていたっけ。そのおかげか、こちらのアルバムもすべてがそれぞれにとても映像的。月並みな言い方をすれば、架空の映画のサウンドトラック的な? 1曲1曲は別の世界観を提供してくれているのだけれど、アルバム全体を聞き通しても、けっして散漫にならないのはそうした映像的な統一感によるものかもしれない。
この人が紡ぐメロディというのは、お若い世代の耳にどう届いているのか、想像もできないけれど。もしかしたら、ちょっと珍しいタイプのメロディメイカーととらえられているのかも。でも、1960〜70年代の青春期に音楽の好みが決定づけられたぼくのような世代の耳には実にナチュラルに、なめらかに、素直に、まっすぐ飛び込んでくるタイプのメロディで。それを今どきっぽいベッドルーム・ポップ系の空気感の中で届けてくれる、なんとも得がたい存在。
ちょっとした遊び心というか、いたずらっぽい表情も魅力的です。
【追伸】
明日は3カ月に一度の定期健診の日。なので、ブログ更新はお休みしまーす。健康第一!