Disc Review

Turn Around: The Complete Recordings 1964-1970 (Re-Press) / The Beau Brummels (Now Sounds/Cherry Red Records)

ターン・アラウンド:ザ・コンプリート・レコーディングス1964-1970(再プレス)/ザ・ボー・ブラメルズ

先週の土曜日、早稲田大学エクステンションセンターで高田漣くんを迎えた特別講座、やりました。たくさんの方に受講していただき、ありがとうございました。ロック・ヒストリーに名を残す名ギタリストのあれこれを振り返る講座で。

クラプトン、ベック、ペイジのいわゆる三大ギタリストやジミ・ヘン、ぐっとさかのぼってレス・ポール、チェット・アトキンスからスコッティ・ムーア、クリフ・ギャラップ、チャック・ベリー、ジェイムス・バートンなどを経て、エイモス・ギャレット、ライ・クーダー、デレク・トラックス、さらには河内家菊水丸、グレイス・バワーズまで。漣くんの実演解説も交えつつ、超駆け足でお勉強。楽しかったです。

これは、ぼくが年に2度、毎週土曜日に4〜5回ずつ行っている英米ロック講座の番外編。11月から12月にかけて、またレギュラー講座もやります。2015年から続けていて、もう第18弾。なもんで、取り上げるテーマも少しずつマニアックになりつつありますが(笑)。今回はエルトン・ジョン、ビージーズ、リトル・リチャード、バリー・マン、そしてヒットチャートにたった1曲だけのヒットを残して消えていった“ワン・ヒット・ワンダー〜一発ヒット屋たち”がテーマ。ご興味ある方は早稲田大学エクステンションセンターのサイトで詳細チェックしてみてください。

しかし、ロックンロールという音楽がアメリカで誕生したのが1950年代初頭だとすると、ロックの歴史もすでに70年以上。長い。こうなってくると往年の、1950〜60年代あたりに活躍したアーティストに関しては、もう代表的なビッグ・ネームのみが語り継がれて、他は忘れられていくだけというか。

ロックに限らず、たとえば1950〜60年代あたりの日本プロ野球選手と言ったとき、長嶋、王、金田、野村、村山あたりは、まあ、今でも問題なくあれこれ語られたりはしそうだけど、城之内とか皆川とか小玉とか近藤和彦とか、ご存じの方はご存じの通り、みんなそれぞれにいい選手だったのに、今やなかなか話題には上らない感じで…。

それと同じ。ビートルズ、ストーンズ、ビーチ・ボーイズ、バーズ、ドアーズ、グレイトフル・デッドあたりはいいとして、マッコイズとかシーズとかサー・ダグラス・クインテットとかクリッターズとかサークルとかシャドウズ・オヴ・ナイトとかスタンデルズとか、いやいや、もしかしたらぼく世代の洋楽マニアがけっこうメジャーだと思い込んでいるラヴとかモビー・グレイプとかポール・リヴィア&ザ・レイダーズとか、ヘタするとタートルズとかグラスルーツとか、そのあたりまで含めた多彩なロック・バンドのことなんか、そろそろ誰も語らなくなっちゃっているような。

こうやっていろいろ個性的なアーティストたちが、時の流れとともに“些末な”存在として切り捨てられ、語られなくなっていきがちなわけですが。早稲田のロック講座ではそういう存在についても取り上げないとなぁ…と思って、今回、“一発ヒット屋”なんてテーマも立ててみたり。がんばっております(笑)。

で、今朝、本ブログで取り上げるボー・ブラメルズもそんな悲しき“消滅可能性バンド”のひとつなのかも。

ボー・ブラメルズ。1960年代半ば、サンフランシスコ・シーンから登場して興味深い試行錯誤を展開した重要なグループのひとつだけれど。そんな彼らがいったん解散を発表するまでの全音源を総まくりした決定版的CD8枚組『ターン・アラウンド:ザ・コンプリート・レコーディングス1964-1970』。2021年に英チェリー・レッド傘下のナウ・サウンズが編纂して、本ブログでも紹介したことがあったボックスセットながら。チェリー・レッド系再発の常で、最近はだんだん入手困難になりつつあったみたいで。

でも、この8月末、めでたく再プレスが実現。輸入盤と国内流通仕様盤がまた日本のレコードショップに出回り始めたので、とりいそぎお知らせ的なエントリー、今朝はポストしておきます。詳しい内容については、以前のエントリーを参照してください。内容はそのままです。

前述した通り、歴史が進んで語るべき事柄がどんどん積もり積もっていく中、情報がざっくり乱暴に淘汰されていく…と。他の分野も含めて、これは仕方のないことではあるのだけれど。

とはいえ、1960年代後半という、ある種絶対的なサムシングが空気中に否応なく漂っていたあの時代にいきいき輝いた個性というのには、何か絶対的なパワーが宿っているとぼくは確信している。そこに漂う“熱”とか“高揚”だけは時の流れによって淘汰されないものだと思う。その部分を聞き取ってこその音楽ファンなんじゃないかな、とか。

まあ、いいか(笑)。いろいろ言ってますが、古い音楽だけど、けっこうイケてますよ、と。そういうことです。ボー・ブラメルズ。未体験の方、ぜひこの再プレスの機会を見逃さず、お試し下さい。

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