Disc Review

Frozen in Time / Los Yesterdays (Now-Again Records)

フローズン・イン・タイム/ロス・イエスタデイズ

先週紹介したジー・ハート・トーンズに続いて、もうひとつ、チカーノ・ソウル系の新作アルバム、ピックアップしてみます。

米ロサンゼルスのダウンタウンからちょっと奥まった、カリフォルニア州アルタデナで結成されたバンド、ロス・イエスタデイズ。2021年に出したシングル「ノーバディーズ・クラウン」がTikTokでバズって、いろいろな投稿のBGMとして使われたことでもおなじみかも。

結成は2017年。プロデューサー/ドラマーのゲイブリエル・ロウランドと、ヴォーカル/ソングライターのヴィクター・ベネヴィデスがガレージ・バンドを始めて。徐々に自分たちのルーツでもあるチカーノ・ソウルとかラテン音楽とかにもアプローチするようになって。

そうこうするうちにロウランドは、ビースティ・ボーイズのプロデューサーとしてもおなじみ、マリオ・Cことマリオ・カルダート・ジュニアが主催したバーベキュー・パーティに出席。そこで超強力なレコード・コレクターとしても知られるDJ、イーゴンと偶然出会って、お気に入りのスウィート・ソウルのシングル盤話で大いに盛り上がったのだとか。

その勢いでロウランドはベナヴィデスとともに初めて自主制作した「ミスター・イエスタデイ」って曲をスマホで再生。イーゴンに聞かせた。一発で気に入ったイーゴンは自身のレーベル、ナウ・アゲイン・レコードからその曲をリリース。ロス・イエスタデイズは幸運なスタートを切ることになったのでありました。

その後、ダップ・キングスのボスコ・マンのレーベル、ペンローズ・レコードなどからもシングルをリリースしつつ、徐々に注目を集めるようになって。先述したTikTokでのバズりとかもあって。いよいよファースト・フル・アルバムが届けられた、と。そういう流れらしいです。

冒頭に「ノーバディーズ・クラウン」が入っているけれど、これはTikTokとかでバズった2021年のシングル・ヴァージョンとは別。ぐっとラテン寄りというか、メキシコっぽい音作りも導入した感じの新アレンジで新鮮に聞かせてくれている。

というか、このファースト・アルバム全体、これまでシングルで聞かせてくれてきたようなギャンブル&ハフとかの影響が色濃いスウィート・ソウル/チカーノ・ソウル系ではなく、もうちょい、たとえばウィリー・ボボとかレイ・バレットとかのラテン・ソウルというか、なんならメキシコのトリオものとか、そっち系のニュアンスにまっすぐアプローチしている感じ。

もちろんこれはこれでナイスですが。もしこのアルバムでロス・イエスタデイズに初めて出会ったなんて方は、ストリーミングでいいので、それまでの一連のシングル曲とかも併せて聞いてみてほしいな、と思いますです。はい。ちなみに本作、フィジカルはヴァイナルのみみたい。まあ、ナウ・アゲインだもんね。

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