Disc Review

Party Of Two: Deluxe Edition (Original Album, plus bonus tracks) / The Rubinoos (The Rubinoos/Pynotic Records)

パーティ・オヴ・トゥー:デラックス・エディション/ルビナーズ

いつもカタカナ表記で悩む洋楽アーティストってのがいて。

まあ、ピーター・バラカンさんみたいに、“アレサ”じゃなく“アリサ”だとか、“レヴォン”じゃなく“リヴォン”だとか、そこまで厳密にこだわっているわけじゃないものの。あまりにも発音の実態と違うものに関しては、ぼくもゆるめには気にしている。

最近だと“ダン・オーバック”ってやつとか。ライヴのMCとか聞いても、自分で“アウアーバック”って言ってるし。ちょっと昔の例だと“カート・コバーン”。“コベイン”だもんねぇ。もっと古くは“レスリー・ゴーア”とか“ダーレン・ラブ”ってのもなんかおかしい感じがして、ぼくはついつい“レズリー・ゴア”とか“ダーリーン・ラヴ”って書いちゃう。

“クリス・クリストファーソン”ってのも気になるなぁ。英語では“Kristofferson”を“krist”と“offerson”に区切って。しかもアクセントを“オ”に置くから。“クリスト/オファソン”的な感じ? 昔、シンガー・ソングライターのポール・ウィリアムスがラジオのゲストに来てくれたとき、どうしても“ファ”にアクセントを置きがちなカタカナ発音で“クリストファーソン”って言ったら、きょとんとされちゃったものです(笑)。懐かしい。

まあ、アルファベットをカタカナにした段階でもう別物なんだから、あまりこだわると、えー、なんだろう、“マイクル・ジャクスン”みたいな、ね(笑)。まあ、確かにそっちのほうが発音的には近いかもしれないけど、見た目の違和感強すぎみたいなことになりかねない。“ジャクスン”を“ジャクソン”って表記するなら“フォー・シーズンズ”も“フォー・シーゾンズ”って書け、みたいな?(笑)

かといって、最近特にWEB上ではそれが普通になってきた、固有名詞だけは欧文表記のまま…みたいな日本語原稿も、世代的にちょっとなじみづらいし。

カタカナ表記、めんどくさいです。

そういう意味では、この人たちもずっと違和感あって。ルビナーズ。“The Rubinoos”だからね。どう考えても“ルビヌーズ”なわけですが。1977年、今は亡きトリオ・レコードから「恋はいっしょに(As Long as I’m With You)」の国内盤シングルが出たときから“ルビナーズ”とカタカナ表記されていて。いまだにどうカタカナ表記したらいいのか、あるいはラジオでどう紹介すればいいのか、心が揺れたままです。

で、そんなルビナーズ、いや、ルビヌーズ? あ、でも、めんどくさいからルビナーズかな? よくわかんないけど、そんな彼らの意欲作が今回改めてデジタル・リリースされたようで、サブスクのストリーミングで楽しめるようになったので取り上げておきます。

この人たち、今も再結集して活動しているけど。いったん活動休止する前、1970年代後半から1980年代初頭にかけてがやっぱり最高にごきげんだった時期で。特に、当時お蔵入りしてしまったサード・アルバム(1993年になってから『ザ・ベースメント・テープス』として発掘リリースされました)がレコーディングされた1980年ごろは、セールス的にはともあれ、まじ充実していたわけですが。

そのサード・アルバムがお蔵になった後、メンバーチェンジ。2代目ドラマーのドンと、4代目ベーシストのアルが脱けて、創設メンバーだったジョン・ルービンとトミー・ダンバーの2人組となった彼らは、心機一転、ビザークリー・レコードからワーナーへと移籍。なんとトッド・ラングレン&ユートピアの全面バックアップを受けつつ5曲入りのミニ・アルバムを制作したのでした。

それが1983年の『パーティ・オヴ・トゥー』。もちろんジョンがヴォーカル、トミーがヴォーカル/ギター/キーボードを担っているのだけれど。エグゼクティヴ・プロデューサーとしてトッドがクレジットされていて。ロジャー・パウエル(キーボード)、カシム・サルトン(ベース)、ウィリー・ウィルコックス(ドラム)がバックアップしているという1枚で。当時聞いたとき、打ち込みとかも導入していて、だいぶイメージ変わっちゃったな…と、ちょびっとだけ腰が引けたものです。

でも、今にして思うとニューウェイヴものが席巻するあの時代に、ルビヌーズとユートピア、それぞれが思うパワー・ポップの最新の在り方みたいなものを模索した1枚として、けっこう興味深く聞けたりもしなくはないというか。コーラスとか、シンセの使い方とか、あのころやはりいろいろ悩みながら試行錯誤していたデイヴ・エドモンズあたりとイメージが重なって。それなりに胸が熱くなります。

「ザ・ガール」って曲とか、デイヴ・エドモンズの「インフォメーション」あたりと一緒に当時よく聞いたっけ。オープニングを飾っていた「イフ・アイ・ハッド・ユー・バック」とか、日本でもちょいちょいビデオクリップとか流れていた記憶があるのだけれど。しかしセールス的には芳しくなかったようで。ルビヌーズは続いて映画のサントラに数曲を提供したりした後、長い活動休止期間に突入してしまうのでありました。

と、そんなミニ・アルバムに未発表曲とかデモ・ヴァージョンとかを追加した全11曲入りのボーナス・トラック入りエディションが2007年にウーンデッド・バード・レコードで編まれたことがあった(Amazon / Tower)のだけれど。そのボーナス入りエディションがこのほど改めてストリーミング開始されたのでご紹介しました、と。そういうお話でありました。

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