Disc Review

Flying Away / Jon Muq (Easy Eye Sound/Concord)

フライング・アウェイ/ジョン・ムーク

ブラック・キーズのダン・アワーバックのイージー・アイ・サウンドから登場した新人さんだ。ウガンダで生まれて、現在は米テキサス州オースティンを本拠にしているというシンガー・ソングライター、読み方がよくわからないのだけれど(笑)、たぶんジョン・ムーク。

アフリカでの子供時代、ブラスバンドに入ったり合唱団に入ったり、いろいろな形で音楽に親しみながら育った後、友だちの家で出くわしたUSAフォー・アフリカの「ウィー・アー・ザ・ワールド」にショックを受けて、本格的に英米のポップ・ミュージックに惹かれるようになったのだとか。

「ウィー・アー・ザ・ワールド」で代わる代わるヴォーカルをとるマイケル・ジャクソン、シンディ・ローパー、ケニー・ロジャース、ブルース・スプリングスティーン、レイ・チャールズなど、多彩なシンガーを真似することでヴォーカルのテクニックを磨き、音楽の幅を広げ、英語で曲を書く訓練もしたという。

ギターも独学。食糧難を乗り切るためにストリートで歌い始め、クルーズ客船のショーにシンガーとして出演するように。その流れでパスポートも取得し、世界各国を巡る中、いよいよアメリカへ。パンデミック前の時期にオースティンに落ち着き、やがてダン・アワーバックの目にとまって。

で、デビュー・アルバムを制作するとともに、ビリー・ジョエル、ノラ・ジョーンズ、メイヴィス・ステイプルズ、コリーヌ・ベイリー・レイらのコンサートのオープニング・アクトをつとめたりしながら現在に至る、と。ざっくりそういう流れみたいです。

アワーバックっぽいウーリッツァー・ピアノとかハモンド・オルガンとか、そのあたりのレトロなタッチがムークさんの持ち味といい感じに絡んで、なにやら新鮮。全12曲中11曲が、共作も含むムークさんのオリジナル。共作者はアワーバックを中心に、ファンシー・ヘイグッド、パット・マクラクリン、ロニー・ボウマン、イアン・フィッチュクら。最近イージー・アイ関連のアルバムのソングライター・クレジットで時折見かけてうれしくなるロジャー・クックの名前も。

で、残る1曲だけがカヴァー。ラビ・シフレの「クライング、ラフィング、ラヴィング、ライイング」をやってます。そのおかげもあってか、確かにラビ・シフレっぽいイメージ強し。あとよき頃のビル・ウィザースとか。あの辺のフォーキーでソウルフルな感触を想起させて。好感度高し。「ランナウェイ」「フライング・アウェイ・フロム・ホーム」など、音楽と出会ったころからの道のりを振り返った自伝的な曲もある。

どの曲もなにやら悲しげでありながら、でも希望に満ちている、みたいな。バイオグラフィを見つけて読んでみたら、“最近の世界は悲しい。だからハッピーな曲を作りたい”とか語っていて。“自分が何を歌っているかではなく、聞く人がその曲をどう受け止めて、何を感じるか。聞く人が何を求めるかによって、私の曲はいろいろな言葉を話すことができるようになる”とか。

なんか、アメリカからはもう出てきそうもない古き良き真面目なシンガー・ソングライターって感じかも。

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