Disc Review

Manifestation / Maurice White (Omnivore Recordings)

マニフェステイション/モーリス・ホワイト

モーリス・ホワイトの未発表音源群が突如どかっとデジタル・リリースされたのは、彼が他界して3年が経った2019年のこと。びっくりした。米ソウル・ミュージック・レコードの発掘リリースで。

キーパーソンはアース・ウィンド&ファイアの1987年作『タッチ・オヴ・ザ・ワールド』に収められていた「システム・オヴ・サヴァイヴァル」を共同プロデュースして以来の付き合いになるソングライター/プロデューサー、プレストン・グラス。以降30年近く、モーリスとプレストンは意気投合して共同作業を続け、40曲以上の楽曲を生み出したのだとか。

そんなふうに制作されながらも長らくお蔵入りしていた音源たち。簡単なデモみたいなものかと思ったら、けっこうがっちり作り込まれたものも少なくなかったりして。しかも、曲がいい。むちゃくちゃいいかと言われると微妙だけど(笑)。でも、けっこういい。

まあ、全曲未発表というわけではなく、プレストン・グラスのセカンド・アルバム『ミュージック・アズ・メディシン』(2008年)でお披露目ずみの「パニック・ボタン」があったり、アース・ウィンド&ファイアの『ザ・プロミス』(2003年)で一部をちょこっとだけ聞くことができていたカリンバ大活躍のインスト「ウィグル」のフル・ヴァージョンがあったり。

その辺も含めて、モーリスの新たなソロ・アルバム、あるいはアース・ウィンド&ファイアの新作のため、1990年代に書きためられていたものが大半。加えて、2001年にブライアン・カルバートソンと組んで制作したアダルトな手触りの「スウィート・サレンダー」とか「トゥルー・ラヴ・イズ・フォーエヴァー」とかもなんだかいい感じで。やっぱモーリス・ホワイト、あなどれないなと、改めてその死を惜しんだものです。

なんかプリンスみたいなアプローチがあったり、ベイビーフェイスみたいなテイストが聞き取れたり。モーリス・ホワイトほどの人がそんなことしなくても…とか思ったりもするけれど。いろいろなところから飽くなき刺激を受け続けようとするのもまたこの人ならではか。

と、そんなふうにぼくたちを驚かせてくれた2019年のデジタル・オンリー・リリース作品が、今回ようやくフィジカル化されましたー。今回は米オムニヴォア・レコーディングズからのリリース。しかも新たにボーナス音源を6曲追加した全18曲仕様。

国内盤もPヴァインから出たのだけれど、オムニヴォアとは別ルートでプロジェクトが進んでいたらしく、こちらは残念ながら全12曲のまま。ストリーミングもこの形。なのでCDを買うなら断然オムニヴォア盤をおすすめするわけですが。

でも、Pヴァインは8月になると日本独自にLPも出すそうで(Amazon / Tower / HMV)。これはいい。素晴らしい。LPで聞きたいもんね。LPは日本盤しか出ないみたいだから、ボーナス曲さえあきらめられれば、LPのリリースを待つのもいい選択かも。でも、6曲も少ないとなるとなぁ…。ああ、悩ましい。

ちなみに元のソウル・ミュージック・レコードものと、Pヴァインものと、オムニヴォアものと、それぞれジャケットでの“Maurice White”の文字の位置とかフォントとかが違います。見分けてね。

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