Disc Review

Patterns On the Window: The British Progressive Pop Sounds of 1974 / Various Artists (Grapefruit/Cherry Red)

パターンズ・オン・ザ・ウィンドウ:ザ・ブリティッシュ・プログレッシヴ・ポップ・サウンズ・オヴ・1974/ヴァリアス・アーティスツ

先週、チェリー・レッド傘下のグレイプフルーツ・レコードが1月に編纂したCD3枚組コンピレーション『ユー・キャン・ウォーク・アクロス・イット・オン・ザ・グラス:ザ・ブティック・サウンズ・オヴ・スウィンギング・ロンドン』ってのを紹介したばかりですが。2月に編纂された新たなCD3枚組もゲットしたので、これまた在庫切れになる前にあわててご紹介します。

グレイプフルーツのコンピレーションにはテーマごとにいろいろなシリーズがあるのだけれど。そのひとつに“The British Progressive Pop Sounds of…”という人気シリーズがあって。時代をそれぞれ1年ごとに区切って編まれ続けているボックスセット。

まず1967年編、1968年編、1969年編とリリースを重ねて、その後、1970年代編に突入。2019年に『New Moon’s In The Sky: The British Progressive Pop Sounds of 1970』、2020年に『Peephole in My Brain: The British Progressive Pop Sounds of 1971』、2021年に『Beyond the Pale Horizon: The British Progressive Pop Sounds of 1972』ってのが出て、2022年に『High in the Morning: British Progressive Pop Sounds of 1973』と続いていて…。ぼくもずっと追いかけ続けてます。

本ブログでは1971年編だけしか紹介していないけど。ものすごく興味深いシリーズ。その1971年編を紹介したときに書いたことを繰り返せば、“ブリティッシュ・プログレッシヴ・ポップ”と銘打たれているものの、いわゆる“プログレ”とはちょっと違う。その年その年の、まあ、なんとなくメインストリーム的なサウンドがあったとして。その軸からちょっとだけプログレッシヴな動きというか、少し先を行っているというか、時代の空気感は意識しつつも普通の形ではハヤリに乗らないぞ…的な心意気を反映したというか、そんなポップ・ミュージック集。

以前紹介した1971年編はサンシャイン・ポップ寄りのソフト・ナゲッツというか、サイケ・ポップというか、適度な洗練と適度な粗暴さが微妙なバランスで共存する隠れた名曲集だったけれど。今回の1974年編のディスク1は、まずブライアン・フェリーがラムゼイ・ルイス/ドビー・グレイをカヴァーした「ジ・“イン”・クラウド」で幕を開けて、以降、スパークス、コックニー・レベル、ミック・ロンソン、ジョン・ケイル、ビーバップ・デラックス…と続く。この冒頭数曲でなんとなく雰囲気、つかめるかも。

ロック音楽がかなりビッグ・ビジネスとして成立するようになったボスト・グラム・ロック期、英米で言うところのソフト・ロック的なテイストとか、アダルト・コンテンポラリーな切り口とか、新世代シンガー・ソングライター的な視点とか、超初期パンクの息吹とかを巧みに取り込みながら作られた名曲集、みたいな?

ロッド・スチュワート、ロン・ウッド、プロコル・ハルム、ステイタス・クオ、マーク・ボラン&Tレックス、ロキシー・ミュージック、スレイドといったビッグネームはもちろん、イアン・デューリーのキルバーン&ザ・ハイ・ロード、ポール・キャラックのエース、ドクター・フィールグッド、デイヴ・エドモンズ、ブライアン・プロズロー、スプリンター、ピーター・ハミル、ケヴィン・コイン、レズリー・ダンカン、ブリジット・セント・ジョン、リチャード&リンダ・トンプソンなど、幅広いアプローチを評価したセレクション。

今回もいちおうサブスクのストリーミングはあるものの、いつものグレイプフルーツもの同様、だいぶ曲目が少なくて、全30曲、1時間45分。フィジカルはその倍以上のボリュームで、全67曲、全長4時間弱。詳細なトラックリストは[グレイプフルーツのホームページ]でチェックしてください。

楽しい写真と詳細な解説を含む48ページのブックレットも付いているから、これまたいつもの通り、フィジカルをゲットしないともったいないかな。

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