
ブルー・ラズベリー/ケイティ・カービー
2021年にファースト・アルバム『クール・ドライ・プレイス』をリリースしたとき、日本でもけっこう話題になったインディ・フォーク系シンガー・ソングライター、ケイティ・カービー。
米テキサス州スパイスウッド生まれ。その後、ナッシュヴィルを経て現在はニューヨークを拠点に活動中。2018年にカセットでリリースしたEP『ジュニパー』がちょっと話題になった後、『クール・ドライ・プレイス』が出て。羽のように軽やかな歌声、静謐なメロディ感覚、思いきり内省的な歌詞世界などをぼくたちに印象づけてくれたものですが。
セカンド、出ました。タイトルの『ブルー・ラズベリー』というのは実際には存在しない架空のフルーツ味のことで。アメリカではシロップの定番フレーヴァー。そこからも連想できる通り、アルバム全体を通して見た目のごまかしのようなものをクールな眼差しで鋭く射貫く感じ?
といってもケイティさん、ありがちなメッセージをストレートに放っているわけではなく。性的マイノリティであることに気づいたという彼女なりの眼差しで、恋したり、破れたり、想いが重なったり、すれ違ったり、あくまでも彼女なりの愛の情景をていねいに、控えめに、魅力的に綴った楽曲集に仕上がっている。
たとえば、タイトル・トラックに近いテーマが託されたと思われる「キュービック・ジルコニア」って曲もあって。人工的に作られたダイヤモンドにちなんだ曲。そこでは“貝殻に収まった牡蠣のようにパーカーに縁取られた顔/あなたの瞳は怒った真珠のように私を見つめている/あなたは土産物屋でいちばんきれいな人魚/こんなに遅く帰ってくるんなら/酔っ払っていたほうがましね”みたいなことが歌われていたり。
ケイティさん、福音派クリスチャンの家庭で学校に行かないホームスクール教育を受けつつ育ったようで。ラストに収められた「テーブル」という曲にはクリスチャンならではの表現なども盛り込まれ、不信心なぼくなどには理解しきれないところも少なくないのだけれど。
そういう生い立ちゆえか、音楽的にもけっこう制限された中で才能を培ってきたらしく。今、ナッシュヴィルでそんな“失われた時間”を取り戻しつつ、世に数多ある多彩な音楽性と新鮮な出会いを果たしているところみたい。そんな新鮮な感触もアルバムの随所に。ファーストよりもぐっとサウンドメイクは地味目に、抑制の効いた感じになっていて。それも素敵。でも、ここぞでのストリングスの使い方とかが的確で。
なんか、ピュアです。とっても。