Disc Review

Gaucho (Vinyl, Remastered 2023) / Steely Dan (Geffen/UMG)

ガウチョ(2023年リマスターLP)/スティーリー・ダン

出るたびに本ブログでも追跡しているドナルド・フェイゲン監修によるスティーリー・ダン最新リマスター・シリーズ。前回、9月だったか10月だったかに1977年の『彩(エイジャ)』が出たときにちらっと予告した通り、12月に入って1980年の『ガウチョ』来ました! 

『彩(エイジャ)』同様、『ガウチョ』もマスタリング前のフラットな状態のオリジナル・アナログ・マスターがもともとレコード会社に納品されていなかったらしく、その行方もわからない、と。なので、1980年当時ボブ・ラドウィックが最終的なEQ処理を施したコピー・マスターを使って、今年、バーニー・グランドマンがリマスタリングした音源による再発らしい。

でも、いい音だった。もともとものすごくよかったし。昔のと、びっちり聞き比べてみたわけでもないので細部までは把握できていないけれど。音と音の隙間をクリアに活かした、奥行きのあるリマスターって感じ。

今回もまた180g通常アナログLPがメイン。それに先駆けてアナログ・プロダクションのSACDハイブリッド盤も出ていて。さらに年末にUHQR 200g重量盤/Clarity Vinylによる超高音質45回転LP2枚組ボックスとかも出る予定で。ただ、以前も言った通り、通常LP以外はバカに高額だし、もともとオリジナルのLPも持っているので、今回も既出4作同様、ぼくはハイレゾ音源(94kHz/24bit)でゲットしましたー。ビバ、エコノミー!

バーナード・パーディ&チャック・レイニー、スティーヴ・ガッド&アンソニー・ジャクソン、リック・マロッタ&ウォルター・ベッカー、ジェフ・ポーカロ&ウォルター・ベッカーという4通りのドラム/ベースの組み合わせが曲ごとに楽しめる、なんとも豪勢なパーソネルで。

というか、ドラムに関しては後のサンプリング技術を大きく先取りした画期的なシステムを駆使しつつの斬新な音の組み立てがなされており。結果、4者とも余計なことはいっさいせず、にもかかわらず聞き手に多くを届けてくれるプレイに徹している感じに仕上がっていて。

どうやっているのか、技術的なことは当時何ひとつわかっちゃいなかったけれど。あ、いや、今でもちゃんと説明はできないけど(笑)。とにかく、この超クールな感触には本当にびっくりさせられたものだ。

ギターのスティーヴ・カーンも、ラリー・カールトンも、ヒュー・マクラッケンも、マーク・ノップラーも、この環境の下、普段の2割、3割増しのプレイを披露しているし。キーボードのドン・グロルニックも、ロブ・マウンジーも、ジョー・サンプルも、音の積み方とか完璧だし。

ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカーという得がたい個性を中心に、ゲイリー・カッツとロジャー・イモータル・ニコルスらスタッフも巻き込みながら、腕ききミュージシャンたちが持てる力をピュアに、惜しみなく提供した傑作。なんて、今さらここで再確認するまでもないか(笑)。やっぱ超名盤です。

ただ、10月にも書いたことだけれど、この最新リマスター・シリーズ、去年の11月以降、まず1972年のファースト『キャント・バイ・ア・スリル』が出て、1973年の『エクスタシー(Countdown To Ecstasy)』、1974年の『プレッツェル・ロジック』と続いて。さあ、次は1975年の『うそつきケイティ(Katy Lied)』と1976年の『幻想の摩天楼(The Royal Scam)』が来るのかなと思いきや。いきなり1977年の『彩(エイジャ)』が来ちゃって。続いて本作『ガウチョ』。『ケイティ』と『摩天楼』は飛ばされちゃいました。

このリマスター・シリーズ、セールス的に評判が良くなかったりするのかなぁ。今回の再発に合わせた映像も、ストリーミングもないみたいだし。なので、今日は本ブログからYouTubeへのリンクもサブスクへのリンクもなし。あー、狭間の2作の最新リマスターはどうなるんだろう。来年出るの? 出ないの? 心配だ…。

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