サザン・スカイズ/ソフィー・ウィンターソン
世代的なこともあるのだけど。ぼくはやっぱり自分が中学生になって洋楽の沼にどっぷりハマリだした1960年代後半から70年代アタマあたりのアメリカン・ポップスが大好きで。そこが基本というか。それはどうしようもなくて。そこから逃れられない。抗えない。
なもんで、その時代のミドル・オヴ・ザ・ロード的な、サンシャイン・ポップっぽい、ちょっとポップ・ソウル的な味わいもある、なんというか、ぼくの世代にとって最高にキャッチーで、エヴァーグリーンな胸キュン系コード進行と素敵なメロディが舞う楽曲群ってやつが今なお個人的好みの軸になっていて。
にもかかわらず、そういうテイストを真っ向からたたえた音楽ってかつてそれらを多数生み出していたはずのアメリカとかイギリスからはもうなかなか出てこなくなっちゃって。むしろスウェーデンとかオランダとか日本とか、そういう異国にマニアックに生き残っている、みたいな?
そんな事実を改めて感じた1枚です。アムステルダムを本拠に活動するドリーミーなインディ・ポップ・アーティスト、ソフィー・ウィンターソンの新作『サザン・スカイズ』。EPとかシングルはけっこう着実に出しているのだけれど、フル・アルバムとしては2014年の『ワイアーズ』、2018年の『ソフィア・エレクトリック』に続く3作目かな。
オランダと言えばこの人って感じのポップ・マスター、ベニー・シングズが共同プロデュース。前作まではもうちょい1980年代初頭っぽいニュー・ウェイヴ感覚とか今どきのベッドルーム・ポップ感とかエレクトロニック感みたいなものが強めに漂っていた気もするけど、今回は1960〜70年代テイストがソングライティング面にぐっと強めに浮き上がってきた。2019年のEP『モラル』を基本に、そこから発展させた1枚という感じだ。音作りのほうは、まあ、曲によっていろいろながら、曲そのものの手触り、おじさんにはツボです。なんか聞いていて幸せな気分になれましたよ。
アルバム・タイトルが歌詞に歌い込まれているオープニング・トラック「アワーズ」とか、十代のころに南欧をドライヴしながら眺めた空の青さのイメージをひとつのきっかけに、時の流れとか、無力感とか、退屈さとか、曖昧な先入観とかを巡るさまざまな思いを交錯させていて。冒頭からすーっと引き込まれます。
今年、シングルとして先行リリースされた「ロスト・ユー・トゥ・ア・ボーイ」「イメージ」「ジャンプ」あたりのツボを心得たポップ・チューンはもちろん、前述『モラル』に収録されていたぐっとミニマルな「ラヴ・ミー・レス」とかもさりげなく魅力的。アコースティックなコード・カッティングが素敵なラストの「パーフェクト・グッドバイ」もしみた。
オランダの音楽ってどこで情報をゲットしていいのかよくわからず、あまり詳しいことを把握できないままふわふわ書いていますが(笑)。ソフィーさん、ソングライターとしても、パフォーマーとしても、じっくり時間をかけながら着実に成長してきているってことでしょう。たぶん。きっと。今のところストリーミングおよびダウンロードのデジタル・リリースがメイン。フィジカルは発売元のウェブ・ショップでCDとかクリア・ヴァイナルのLPとか売っているけど、オランダ語だなぁ…(笑)。