追悼:トム・ベル
年末年始、寒い時期にはなんだか訃報が多く届く気がする。今朝もジェフ・ベック他界という衝撃のニュースにうちひしがれたばかり。ショックだ。1960年代から70年代にかけて、ロックとかソウルとか新時代のポップ・ミュージックの可能性をいきいきと切り拓いてくれた世代が年齢的にそういう段階に入っているわけで。仕方ないことかなとは思う。誰にだって永遠の旅立ちの日はやってくるのだから。
とはいえ、自分が多感だった時代を牽引してくれたポップ・ヒーローたちの旅立ちの報せはいちだんと沁みる。去年の暮れ、ブログの年末休みに入ります…とお知らせした直後にもひとつ、悲しいニュースが飛び込んできた。『otonanoラジオ』の収録現場でスタッフから教えてもらったんだっけ。あの日もショックだったな…。
トム・ベル。1960年代末からフィラデルフィアを本拠に数多くの名作フィリー・ソウルを世に送り出した名プロデューサー/ソングライター/アレンジャー。ケニー・ギャンブル、レオン・ハフとともに不滅の“ザ・マイティ・スリー”と呼ばれたひとりだ。この人も特に1970年代、ぼくの心を大いに盛り上げ、癒やし、泣かせてくれたポップ・ヒーロー。長い闘病期間を経て、現地時間の12月22日、ワシントン州ベリンハムの自宅で亡くなった。享年79。
彼の言葉でとても印象的だったのは、自分は曲を書いたりアレンジしたりするとき、イントロからエンディングまでけっして手を抜かず全力を注ぎ込む、というやつ。なぜなら、ラヴ・ストーリーのおいしい部分だけ書くのではなく物語のすべてを伝えたいからだ…みたいなことを語っていて。しびれたものだ。
というわけで、スロウバック・サーズデイ恒例のNBPプレイリスト、今週はトム・ベル特集。彼は1975年にグラミーの最優秀プロデューサー賞を獲得した名プロデューサーであると同時に、2006年、ソングライター名誉の殿堂入りも果たしている名ソングライターでもあって。今回はそんなソングライターとしての側面に注目。彼が書いた名曲群の中からぼくの好きなものを12曲ピックアップして並べてみました。英ACEが2020年に編んだより充実したトム・ベル作品集へのリンクも貼っておきますね。
トム・ベルがぼくたちにプレゼントしてくれたとびきりメロウでスウィートな世界観を味わい直し、感謝の気持ちを新たにしたいと思います。どうか安らかに…。
RIP Thom Bell, the Sound of Philadelphia Producer/Songwriter
- I'll Be Around / Spinners (1973)
- Didn't I (Blow Your Mind This Time) / The Delfonics (1970)
- One Man Band (Plays All Alone) / Ronnie Dyson (1970)
- I'm Your Man / Brooks O'Dell (1964)
- One In a Million (Girl) / O'Jays (1979)
- I'm Coming Home / Johnny Mathis (1973)
- Break up to Make Up / The Stylistics (1972)
- One Step Away / The Blossoms (1970)
- I’m Doin’ Fine Now / New York City (1973)
- His House and Me / Dionne Warwick (1975)
- Are You Ready for Love / Elton John (1979)
- Betcha By Golly Wow! / Prince (1996)